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樹木の葉形(計測編)
科目 基礎生物学実験I(中等・環境)
習得目標 ●形態の計測と定量化
●データの統計的な記述と検定
●実験におけるコンピュータの活用
概要 さまざまな樹種の葉形を計測し、「葉形がどのような要因と関連しているか」を調べる
実験の順序 1. サンプリング (標本採取) (05/28)
2. 計測 (05/28)
3. 計測値の入力 (05/28および各自)
4. 種ごとのデータ整理 (次回)
5. 種間の比較と仮説の統計的検定 (次回)
6. レポートの作成 (各自)
実験の背景

葉の説明 被子植物の葉は、葉身葉柄托葉葉鞘の4つの部分に分けることが出来ます。葉身は平面的に広がった部分で、葉柄は葉身と茎をつなぐ軸、托葉は葉柄の基部についていている一対の小さなかけら、そして葉鞘は葉の付け根が茎を取り巻いている部分です(セロリやタマネギの食べるところのほとんどは葉鞘)。葉柄・托葉・葉鞘はないこともあります。

複葉と単葉 葉身がさらに複数の「葉みたいなもの」(小葉)に分かれているような葉を複葉と呼び、分かれていないものを単葉と呼びまあう。複葉は、小葉の配置に応じてさらにいくつかに分類されます。

葉の形は、種によってさまざまで、種を判別する際の大きな手掛かりになります。一方では、葉形の多様性を遺伝的なコントロールや生態的な意義から解きほぐす研究も行われていますが、全ての多様性を解きほぐすには至っていません。

この実験では、単葉を持つ双子葉植物の樹木に限定して、「葉形が自己被陰を小さくする傾向を示す」という仮説を検証します。

「自己被陰」とは、葉に当たる太陽光が同じ個体の葉によってさえぎられることです。葉の主要な機能は「太陽光を受けて光合成をする」ことです。1本の枝に多数の葉を付けた方がたくさんの光を受けられますが、葉と葉の重なり合いがあまり多いと、下の方にある葉には、上方の葉を透過した光しか当たらなくなるので、効率が悪くなります。

仮説に基づいて、次のことが予測されます。計測値から直接検証するのは、この3つの「作業仮説」です。

  1. 丸い葉は細い葉に比べて葉柄が長い→葉が丸くなるほど葉柄が相対的に長くなる
  2. 「葉の基部の広がり」は「直立型」の種より「背腹型」の種の方が大きい
  3. 「葉の基部の広がり」は常緑樹の種と落葉樹の種でははっきりとした差がない
枝振りの2タイプ 図左のように、枝と葉の面が垂直になるタイプを、ここでは「直立型」と呼び、図右のように、枝と葉の面が同一の平面となるタイプを、ここでは「背腹型」と呼びます。
トベラ ヘラノキのシュート
左の写真のトベラ(トベラ科)は典型的な直立型の例、右のヘラノキ(シナノキ科|アオイ科)は、典型的な背腹型の例です。
サンプリング
サンプリングと計測は各班ごとに行います。

大学構内の樹木(植裁されているものも含む)から、葉を採集します。各種ごとに1個体を選び、生長を完了している葉を葉柄ごと5枚(以上)採取します(本来はもっと多数の個体・多数の葉を調べるべきです)。(班の人数×5)種(以上)集めてください。

計測
計測項目

10枚の葉について、右図の計測項目1〜4を物差しで計測します。各項目は、次のような意味を持っています。種名・落葉樹か常緑樹か・直立型か背腹型か、を教員に聞いてメモしておいて下さい。

  1. 葉身の長さ
  2. 葉身の幅(葉身が最も広くなるところを選んで測る)
  3. 葉身の基部と幅最大部との距離
  4. 葉柄の長さ

各測定値は、mm単位で計測し、以後の計算結果でもmm未満の桁は四捨五入して下さい。

種ごとのデータ処理

ここからは、パソコン教室のパソコン、または自宅のパソコンを使って、各自で行なって下さい。

  1. 下のページ(樹木の葉形)を開く
    http://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/jikken/leaf_shape3.html
  2. 入力用のMicrosoftExcelシートをダウンロード(ネット上にあるファイルを自分の手元のコンピュータにコピーすること)していったん保存し(右クリック→対象をファイルに保存)、ダブルクリックして使って下さい。

    入力用のシート

    開くと、このようになっています。

  3. 1〜4をのワークシートに入力します。1〜4を入力すると、下の5〜8が計算されます。
    1. π/4×葉身長×葉身幅: 葉面積の近似値
    2. 葉柄長/(葉身長+葉柄長): 葉身と葉柄との長さの比率。「葉柄の相対的な長さ」を表わします。
    3. 葉身幅/葉身長: 葉が細長いほど小さくなります。
    4. 葉身幅/(葉柄の長さ+葉身の基部と幅最大部との距離): 「葉の基部の広がり」の目安となります。これが大きいと、すぐそばに付いている葉と重なり合う危険が大きくなります。
    また、10枚分の平均と標準偏差が下の方で計算されます。
  4. 作業が終わったら、下のExcelシートをダウンロードし、班ごとのデータをまとめて下さい

    まとめ用のシート

ここまでの作業を、次回の授業(6月下旬以降)までに完了しておいて下さい。


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