前節で WCS の基本的なコンセプトと座標の変換手順について概説したが、実際の変換にあたっては step3 で扱うのが天球座標の場合と分光座標の場合が想定される。 このために WSC paper II と WCS Paper III が分離されたが、分光座標については議論が続いている部分があるので、ドラフトにとどまっており、先に天球座標に関して扱う WSC Paper II が正式に認められた。 ここではまず WCS Paper II に基づいて天球座標を FITS のデータ上でどのように記述するかについて概説する。
前節の step1, step2 で、ピクセル座標から中間世界座標までの変換( )をした後、この中間世界座標から天球座標への変換(前節の step3) を2つのサブステップに分割する。 この2つのサブステップは平面から球面への変換と球面回転に対応しており、 という変換をすることになる(この式で出てくる記号については下図及び後の説明を参照)。
【前節の step3 の部分の詳細図:】 [中間世界座標] (射影平面座標 (x, y)) ↓ ← 座標変換 (CTYPEia, PVi_ma キーワード) ↓ 平面から球面への射影 (局所(Native)球面座標 (φ,θ)) ↓ ← 球面回転 (CRVALia, LONPOLEa, LATPOLEa キーワード) ↓ 3つの Euler角を決定して回転 (天球座標 (α, δ)) [世界座標 (WCS)]
これらのサブステップでは次のような変換を行う。
2 つのサブステップでの変換はやや複雑であり、見通しを良くするため次のような順序で解説する。 まず通常の観測から得られたデータを FITS ファイルに書くような場合を想定して、天球座標 (例えば、 )からピクセル座標 への変換手順を概説する。 次にその逆に、WCS を使った FITS ファイルのデータのピクセル座標 から天球座標 を求めるための FITS パラメータについて述べる。