城山周遊道の植生調査

城山周遊道の植生(維管束植物群集)を簡便な方法で調査し、地形条件との関係を考察します。

調査対象の特徴


調査の方法

  1. 道に沿って巻き尺で調査ラインをとり、10mごとに区間を分ける。ラインの左右2m以内を調査範囲とする。
  2. 区間ごとの出現植物種(シダ植物・種子植物)を記録する。高さ3m以下の植物は根際が範囲にかかるもの、高さ3m超の植物は樹冠が範囲にかかるものを対象とする

データ整理

出現種×区間の表を作る

種 \区間 生活型 1 2 3 4 5 6 7 出現区間数
種1 (××科) 常緑樹 1 0 1 1 25
種2 (××科) 常緑樹 1 1 1 0 20
種3 (××科) 草本 1 0 1 0 12
種4 (××科) 常緑樹 0 1 1 1 8
種5 (××科) シダ 0 1 0 1 5
種6 (××科) 落葉樹 0 0 1 1 10
種7 (××科) 落葉樹 0 0 0 1 3
種8 (××科) 常緑樹 0 0 0 1 17
種数
3 3 5 6
新規出現種数
3 2 1 2
累積種数
3 5 6 8

文献調査

種の同定ミスのチェックや、注目すべき種の選定のために、調査結果と既存の植物相に関する文献を照らし合わせる。今回の調査範囲に関しては、次の3つの文献を参照する。

  1. 渡辺幸子 1994 宗像の植物 宗像市史編纂委員会(編) 宗像市史通史編第一巻 pp.206-298 (第5章第1節)
  2. 神野展光 1994 宗像の植生 宗像市史編纂委員会(編) 宗像市史通史編第一巻 pp.299-315 (第5章第2節)
  3. 福岡県希少野生生物調査検討会(編) 2001 福岡県レッドデータブック2001: 福岡県の希少野生生物 福岡県環境部自然環境課
チェック項目

出現頻度の分布

出現頻度の分布をつくる。

那珂川種出現頻度

左の例は、ある河川の植物相調査(調査区数は13)の結果から作られた頻度分布の例だ。多くの場合、頻度分布は右に行くほど少なくなる。減り方の度合いは、植物相の変化が激しいところほど大きいのがふつうだ。

また、下は、同じデータで、出現頻度1(赤)・出現頻度2(緑)・出現頻度3(青)の種が見られる数を各調査区ごとに示したものだ。全体の種の多様性に最も貢献しているのは13区、ついで14区と8区だ。

那珂川種出現頻度

種数曲線

種数曲線 種数曲線

上のデータから、(1)区間と種数の関係、(2)区間と累積種数の関係、を表わすグラフを作ることができる。

(1)は、各区間の種多様性をすなおに表わす。(2)は、「面積―種数曲線」と似たような意味を持ち、植物相が比較的一様な場合は最初は急に上がって徐々に飽和する曲線となる。植物相に大きな変化があって新規出現種が多い区間では曲線の傾きが急になる。

区間どうしの類似度

種 \区間   3     4     3×4  
種1 (××科) 1 1 1
種2 (××科) 1 0 0
種3 (××科) 1 0 0
種4 (××科) 1 1 1
種5 (××科) 0 1 0
種6 (××科) 1 1 1
種7 (××科) 0 1 0
種8 (××科) 0 1 0
種数 5 6
新規出現種数 1 2
累積種数 6 8

「2つの区間の出現種が互いにどれくらい似ているか」を表わす指数を「類似度」と呼ぶ。いちばん単純な方法では、個々の種を同格と考えて、区間AとBについて、類似度を次のようにして求める。

類似度(1)=(AとBに共通する種の数)×2/(Aの種数+Bの種数)

あるいは

類似度(2)=(AとBに共通する種の数)×(AとBの両方とも出現しない種の数)/(全種数)
(全種数)=(AとBに共通する種の数)+(AとBの両方とも出現しない種の数)+(Aに出現し、Bに出現しない種の数)+(Bに出現し、Aに出現しない種の数)

表計算ソフトでは、右のように、2つの区間の0/1データを掛け合わせた列を作ると、その総和が共通種数となる。この例では、区間3と4との類似度(1)は[3×2/(5+6)]で0.55、類似度(2)は[(3+0)/8]で0.375となる。


1 2 3 4
1 1 0.50 0.68 0.13
2 0.33 1 0.50 0.38
3 0.75 0.25 1 0.38
4 0.22 0.44 0.55 1

同様にして他の組み合わせを計算すると、右のような「類似度行列」ができる(左下半分が類似度(1)、右下半分が類似度(2))。


区間どうしの類似度

「区間」と「種」を入れ替えると、同じようにして、「各区間への出現の有無に基づいた種どうしの類似度」を求めることができる。ただし、あまり出現率が低い種では、類似度は当てにならない。

クラスター図

類似度が大きい区間どうし(または種どうし)が先に結びつくようにして、各区間を樹状図に表わしたものがクラスター図だ。クラスター図は、頑張って表計算ソフトで作れないこともないが、時間が掛かるため、ソフトを使った方がよい。

下は、上の例をもとにしたクラスター図だ。類似度の定義や、クラスター図の方式には複数あるため、3通りずつ表わしてある(左から、類似度(1)+群平均法、類似度(2)+群平均法、Ward法)。

区間の類似度に基づくクラスター図

下の方で結びつく区間ほど、出現種の組成が似ていることを意味する。

種の類似度に基づくクラスター図

下の方で結びつく種ほど、分布が似ていることを意味する。

実際のデータに基づく分析へつづく。
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