シラン(ラン科)の花
シラン

シラン栽培株。野生のものは川べりの岩上などで生育する。

シラン花序の下から上へと咲いていく。つぼみは膜のような苞で保護されている。花柄は短く、花柄のように見える部分は、付け根近くを除いて下位子房。

シラン

受粉した花では、子房がふくらみ、果実に変わる。

シランシランシランシラン

ラン科の花はユリなどと同じように6枚の花被片を持つ。外側に3枚の外花被片(OT)、内側に3枚の内花被片(IT)が互い違いにつく。花に向かって下側にある内花被片は他の5枚と形が違い、唇弁[labellum](L)と呼ばれる。唇弁は、訪花昆虫の着地に都合のいい形をしていたり、目立つ模様があることが多い。シランでは、凸凹とした踏み台のようになっていて、左右がまくれ上がっている。唇弁の真上には、雄しべと雌しべが合わさって1本の柱のようになった蕊柱―ずいちゅう―[column; gynostemium](C)がある。訪花昆虫は、唇弁と蕊柱でできたトンネルの中に潜り込む。

シラン左右に押し広げた唇弁。

シラン
簡易紫外線写真。可視光線による写真(左)とわずかに色調が異なる。唇弁の先端は全体が近紫外線を吸収し、蕊柱は反射する。

シランシラン

唇弁の半分と外花被片1枚を残して花被片を取り除いた。訪花昆虫は、唇弁(L)を足場にして蕊柱(C)の下の空間を花の奥に向かって進む。ゆるやかに曲がった蕊柱の先端(★)に、昆虫の背中がこすりつく。

シラン
蕊柱の縦断面

シランシラン

子房室から続く筋が、蕊柱先端近くの張り出しに続いている。この張り出しが、柱頭にあたる。柱頭の先(写真では左側)には葯がある。葯と葯隔(葯がついている白い部分)は、蕊柱本体とつながるところがくびれていて、動きやすくなっている。

シランシラン

蕊柱の先端を下から見たところ。先端から葯隔(CN)・葯(A)・柱頭(S)の順に並んでいる。葯隔と葯は、軽くつつくだけで上に反り返って、葯の中の花粉のかたまり(花粉塊[pollinia])が、ぽろりと出てくる(右)。訪花昆虫が花から出ようと後退する(写真では、下から上へと動く)とき、同じことが起こり、花粉塊が虫の背中に粘り着く。

シラン シラン

花粉塊を構成する花粉四分子

シラン花粉塊・ニッポンヒゲナガハナバチ雄シランが咲くころには、花粉塊が背面に付着したハナバチがひんぱんに見られる

Sugiura N. 1995. The pollination ecology of Bletilla striata (Orchidaceae). Ecological Research 10(2): 171-177. DOI: 10.1007/BF02347939 (Abstract)

ラン科の花は、シランの例で見られる基本構造を保っているが、花被片や蕊柱のかたちは、種類によって大きく違う。招き寄せる昆虫の違いがラン科の花の多様性と関わっている。


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