6-7. 動物媒花:××媒花

選別の(あるいは、選別をしないことの)反映として、特定のグループのポリネーターに送粉される花は、送粉者と対応した複数の特徴の組み合わせ(送粉シンドローム[pollination syndrome])を示すことが多い。

「送粉シンドローム」は風媒花や水媒花にも使われる。
6-7-1. ハナバチ媒花
ウツボグサウツボグサ(シソ科)の花を巡回するトラマルハナバチ

動画
ツクシアザミ(キク科)を訪花するトラマルハナバチ

ハナバチ[bee]はミツバチ科(ミツバチ・マルハナバチ・クマバチなど)・コハナバチ科・ヒメハナバチ科・ハキリバチ科などのグループを含む単系統群(共通の祖先から進化したグループ)で、蜜と花粉を集めて幼虫に与える生活をしている。ミツバチとマルハナバチは真社会性で、女王(クイーン)・雄・働き蜂(ワーカー)からなる家族集団(コロニー)をつくる。ミツバチでは、(スズメバチ+アシナガバチ)とアリ、シロアリと並ぶ大規模な家族集団が進化した。マルハナバチの家族集団は比較的小さく多くても数十個体程度だ。

英語では、アリ[ant]とハナバチを除いたハチ亜目(場合によってはハチ目)を"wasp"と呼ぶ。

ハナバチは、高い飛翔能力と器用で力強い脚、長いくちばし(口吻)を持ち、身体は花粉が付着しやすい毛で覆われている。ハナバチに送粉されることには、次のようなメリットがあると言われる。

  1. 体表に花粉が付着しやすい。ただし、その多くは脚で集められ、巣に回収される。
  2. 形態認識や記憶・学習の能力が高く、同じ種類の花を続けて訪れる性質が強い。
  3. 活発に花を探して動き続け、飛翔範囲が広いので花粉を遠くの花に運ぶ可能性が高い(自分のエネルギー源としてだけでなく、巣に持ち帰って仲間や幼虫の餌にするため、大量の蜜・花粉を集める)。

ハナバチに大きく依存する花=ハナバチ媒花はしばしば次のような特徴を持つ。

オドリコソウハナバチがオドリコソウ(シソ科)の花に潜り込んでいる。下は吸蜜が終わり、花から離れようとしているところで、長いくちばしが見える。
オドリコソウ

ハナバチは蜜・花粉の両方を食料とするので、ハナバチ媒花以外のさまざまなタイプの花を訪れる。

6-7-2. チョウ・ガ媒花
ヒガンバナ・カラスアゲハ
ヒガンバナから吸蜜するカラスアゲハ。オニユリ・ヒガンバナのような朱色系の花には、アゲハチョウがよく来る

チョウ・ガは液体を吸うのに適した長い口を持つので、チョウ・ガ媒花はハナバチ媒花と同じく蜜腺を花筒の底に隠していることが多い。しかし、他の特徴には多数の相違点がある。

ハナバチ媒花との相違点

チョウ・ガは狭いところに潜り込んだり花弁を押し下げたりすることができない。また、脚が細く、翅は鱗粉で覆わるためにハナバチと比べると花粉が付着しにくい。

市販のユリの花では、葯が取り除いてあることが多い。少し触れただけで花粉がべったりと手や服につくためだ。
ユリ属の1種
ユリ(園芸品)の葯

アカバナユウゲショウアカバナユウゲショウ(マツヨイグサ属)の花。T字形についた葯、つながった花粉が見える。

コマツヨイグサツツジ(オオムラサキ)
巻きついた糸でつながった花粉粒
上: ツツジ園芸品種
左: コマツヨイグサ(アカバナ科)


ツツジ園芸種ツツジ園芸種(オオムラサキ)の花で吸蜜しているジャコウアゲハ

オニユリオニユリ
オニユリ(ユリ科)。葯と柱頭は花の外に突き出て、上向けに湾曲している。葯と花糸は「T」の字状につながっていて、さわるとぐらぐらと動く。

オニユリキアゲハがときおり羽ばたきながら吸蜜している
夜行性スズメガ媒花

チョウ・ガ媒花の中で、夕方から朝にかけてスズメガに受粉されるスズメガ媒花は、白~明るい黄色の花、芳香など独特の特徴を持つ。カラスウリ類やマツヨイグサ類のように夜咲きで朝にはしぼんでしまうものが多いが、昼まで咲き続けてハナバチなど他の昆虫の訪花を受けるものもある。

ハマニンドウハマニンドウハマニンドウ
ハマニンドウ(スイカズラ科)。夕方から明け方にかけて良い香りを放つが、昼も咲き続ける。
キク科の頭花とチョウ・ガ

キク科の頭花を構成する一つ一つの花は筒状なので、他の昆虫とともに、チョウ・ガもよく来る。

ハルジオン・ベニシジミ
ハルジオン(キク科)から吸蜜するベニシジミ

ツクシアザミ・ホシホウジャク
アザミから吸蜜するホシホウジャク。スズメガ類は、非常に長い嘴を持ち、空中静止(ホバーリング)ができる。
チョウ・ガ媒花とハナバチ

チョウ・ガ媒花の特徴を持つ花でも、ハナバチの訪花はしばしば見られる。

スイカズラ
スイカズラ(スイカズラ科)。ハマニンドウと近縁で、スズメガ媒花の特徴が強いが、昼間に観察していると、来るのはハナバチの仲間が多い。

スイカズラ
潜り込んで吸蜜するコマルハナバチ

スイカズラ・ケブカハナバチ
スイカズラ・ケブカハナバチケブカハナバチが吸蜜している。

cf. Miyake, T. and Yahara, T. (1998) Why does the flower of Lonicera japonica open at dusk? Canadian Journal of Botany 76:1806-1811
オオムラサキ・ケブカハナバチツツジの園芸品種(オオムラサキ)を訪花するケブカハナバチ
6-7-3. 鳥媒花

赤~朱色、厚みがあって丈夫な花冠、多量にたまった濃い蜜が共通する特徴だ。

吸蜜する鳥には、ハチドリのようにホバーリングしながら吸蜜するものもいるが、枝に止まって吸蜜するものも多い。後者の場合、「止まり木」が必要で、太い枝に花が直接ついたり(オオバヤドリギ・マツグミなど)、花序の軸が太くて丈夫だったり(アロエなど)する。

南アフリカの乾燥地に生えるBabiana ringens(アヤメ科)では、ふつうの花序の横に「止まり木」の役目をする「花のつかない花序」ができ、鳥の吸蜜を助けるという。
オオバヤドリギオオバヤドリギ
オオバヤドリギ(オオバヤドリギ科)。秋に開花する。葉が落ちた枝に短い花序がつく。

鳥類の中で花蜜を主食とするグループとしては次の3つがあり、それぞれ別々に進化したと推定されている。

  1. ハチドリ類[hummingbird](北米南西部~南米)
  2. ミツスイ類[honeysucker](オーストラリアとその周辺)
  3. タイヨウチョウ類[sunbird](アフリカ~西・南・東南アジア~オーストラリア)+ハナドリ(ハナツツキ)類[flowerpecker](南アジア~東南アジア~オーストラリア)
カンザクラ・ヒヨドリ
カンザクラ・メジロカンザクラ(バラ科)から吸蜜するメジロとヒヨドリ

日本でも、特に他の餌が乏しい早春にメジロやヒヨドリなどの吸蜜が市街地でも容易に観察できる。

その他の例→鳥媒花


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