4-2. 茎・二次成長
4-2-1. 茎の断面
茎の断面双子葉植物の茎横断面の模式図
1―表皮; 2―皮層; 3―髄
4―木部; 5―篩部; 6―維管束形成層

組織分化した茎では、最外層の表皮の内側に柔組織があり、柔組織の中を木部と篩部が通っている。被子植物では、茎の維管束は木部が茎の中心側、篩部が茎の外側にあることが多いが、カボチャのように、木部の両側に篩部があるものもある。

コメツブツメクサコメツブツメクサ(マメ科)の茎の横断面

双子葉植物では、維管束がほぼ一円筒上に並ぶ(断面を見ると維管束が一つの円を描くように並ぶ)ことが多いので、その外側の柔組織を皮層[cortex]、内側の柔組織を[pith]と呼ぶ。

ハルジオンヒメジョオン
ハルジオンとヒメジョオン(ともにキク科)の茎の断面。ハルジオンの茎は中空、ヒメジョオンは白い髄が詰まっている。

髄は、大きくて細胞質が少ない柔組織からなる。ある程度茎が太くなると、髄の細胞が壊れて中空になるものも多い。

単子葉植物では、維管束は柔組織全体に散在する(複数の同心円を描くように並ぶ)ことが多く、皮層と髄の区別ができないのがふつうだ。

ニンニクオランダキジカクシ
ニンニク(ユリ科|ヒガンバナ科)・オランダキジカクシ(ユリ科|キジカクシ科)の茎の断面
マダケ マダケ
マダケ
マダケ(イネ科)筍の横断面で見られる維管束群。中心側ほど大型の維管束が分布する傾向がある。
4-2-2. 繊維細胞や厚角細胞による茎の補強
スイバスイバ(タデ科)の茎の断面
スイバ上の写真の白黒画像。▼で茎の表面の盛り上がった縦筋(稜 りょう[rib])を、▽で維管束を示す

スイバの茎断面スイバの茎の断面、稜と維管束を含む部分の拡大。稜(左)の内部は厚角組織で占められ、維管束(中央)は繊維細胞の組織にはさまれている。茎の中心部に近づくほど(右)細胞が大きく、細胞壁が薄い。

草の茎の断面を見ると、繊維細胞や厚角細胞がところどころにあって茎の強さを支えていることが分かる。これらの細胞は維管束の近く、従って茎の周辺部にあることが多い。逆に、中心部(髄)では細胞は大きいが細胞壁も薄い傾向がある。さらに、髄の細胞が死んでしまい、回りの細胞の成長に追いつかずに、空洞になっている種類も少なくない。イネ科では、茎の回りを葉鞘が取り巻いて補強している。このように、草の茎は、おもに周辺部によって支えられている。同じ量の材料を使った場合、ただの棒よりも中空のパイプにした方が折り曲げに対して強いので、これは理に適っている。種類によっては、茎が角張っていて、角のところに繊維細胞が集中してさらに強さを高めている。

オドリコソウオニウシノケグサ
左―オドリコソウ(シソ科)の茎断面。中空で、四隅の盛り上がった部分(稜)がある。右―オニウシノケグサ(イネ科)の茎断面
4-2-3. 茎の太さ
ケヤキ
ケヤキ(ニレ科)の樹形

茎は上部の枝葉を(1)物理的な強度と(2)導管による水の供給の両面で支えている。だから、上部につく枝葉が多いほどより大きな断面積が必要だ。樹木や茎が立ち上がる草では、シュート系の基部で最も茎が太く、先端に行くほど細くなる。また、分岐点では分岐前より分岐後ではっきりと細くなる。

茎の断面積と支えている葉の量との間に比例関係を仮定する理論を「植物のパイプモデル[pipe model]」といい、さまざまな植物の実測に基づいてShinozaskiら(1964)が提示した。パイプモデルを図式化するときには、パイプ状の(=断面積一定の)茎が一定の葉量を支える仮想上の単位(単位パイプ)を想定し、植物体を単位パイプの集合体として表現する。パイプモデルは単純な仮定に基づくにもかかわらず実測値と近似するケースが比較的多く、樹木の個体重や葉量、さらに光合成量や呼吸量の推定に応用されている。

Shinozaki K, Yoda K, Hozumi L, Kira T. 1964. A quantitative analysis of plant form―The pipe model theory. I. Basic analysis . Jap. J. Ecol. 14: 97-105. link
植物のパイプモデル
植物のパイプモデルを図式化した一例。A: 単位パイプ (1: 一定量の葉; 2: 断面積一定の茎)、B: 枯死した単位パイプ (3: 脱落した葉; 4: 脱落した茎; 5: 残存する茎)。
この図で樹形がずんぐりに見えるのは、茎の太さをパイプを平面的に並べて示しているためで、例えば、幹の基部は単位パイプ13本からなり、直径に換算すると単位パイプの√13≒3.6倍だ。

パイプモデルの下では、枯死した枝葉より上では茎の断面積と上部の葉の総重量が比例し、茎の分岐では「分岐前の茎の断面積=分岐後の茎の断面積の総計」という関係が成り立つ。

4-2-4. 二次成長

植物の成長につれて茎が伸長と分岐を繰り返すと、支えるべき側枝と葉が多くなり、茎に必要とされる物理的強度と導管の断面積も大きくなる。そうでなかったら、風圧で倒れてしまうか、水分が行き渡らなくなって枯れてしまうだろう。同じように、根も先端で伸長と分岐が進むにつれて、より大きな導管断面積を必要とするようになる。だから、シュートも根も、全体の太さと木部・篩部を後から付け足していくしくみ(二次成長[secondary growth]を持っている。

二次成長は双子葉植物ではごくふつうに見られるが、単子葉植物ではほんの少数のグループにしか見られない。ほとんどの単子葉植物は二次成長をしないため、茎と根が後から太くなることがない。

二次成長のようすは、シュートと根で共通している。木部と篩部の間の細胞が分裂組織になり、内側に木部を、外側に篩部を作り出す。この分裂組織を維管束形成層、略して形成層[vascular cambium]という。

セイタカアワダチソウ
セイタカアワダチソウの若い茎の断面と維管束。右の写真は、上から、篩部(細胞壁はやや厚いが染まっていない。大小の細胞が入れ交じる)→形成層(細胞壁が薄い。細胞がやや整然と並ぶ)→木部(ピンク色に染まった導管がある)。篩部の上に柔組織より小さな細胞のかたまりがある。この部分が繊維細胞群に変わっていく。

セイタカアワダチソウ茎断面
セイタカアワダチソウのさらに古くなった茎の断面と維管束。リング状につながった形成層の内側に、繊維細胞と導管からなる木部ができている。

二次成長

茎の横断面では、形成層が維管束どうしをつなぐようにリング状になる。形成層の細胞分裂の結果、隣り合う維管束同士の境目はだんだん分からなくなり、篩部・形成層・木部が同心円状に並ぶようになる。根の横断面でも、形成層の細胞分裂によって木部が円形に(立体的に見ると円柱状)なり、やはり篩部・形成層・木部が同心円状に並ぶようになる。

ゴンズイゴンズイ(ミツバウツギ科)の若い茎の断面。

ゴンズイゴンズイ(ミツバウツギ科)の若い茎の断面(拡大)。つながった維管束形成層(左から2/3あたりを縦に走っている)が左側に厚い木部を作り出している。
木本の二次成長

草本(草)と木本(木)の違いは、「二次成長がどれくらい続くか」という違いだ。 草では、二次成長は短時間に停止し、茎はある程度で太るのを止める。木では、二次成長は何年も持続し、太り続けた茎・根では断面積のほとんどを木部が占めるようになる。

木本の茎の断面を占める大量の木部を「」[wood]という。材では、縦方向に長い導管・繊維(裸子植物では仮導管)の間を放射方向(中心―外側方向)に長い繊維が交差している。細胞壁にはリグニンとセルロース、細胞の間もリグニンで満たされている。これらの構造によって、強靱さ(特に圧縮抵抗性)と耐久性を兼ね備えている。高さ数十メートルに達するものもある樹木のからだは、幹の中を占めている材によって支えられている。

クスノキクスノキ(クスノキ科)の材(走査電子顕微鏡像)。右上が幹の中心方向、左下が樹皮側。上面が横断面(木口 こぐち)、左面が樹皮と平行な縦断面(板目 いため)、右面が樹皮と直交する縦断面(柾目 まさめ)にあたる。スケール=100μm。
クスノキ横断面。密集する繊維細胞の中に導管要素(太い管状・細胞壁が厚い)と精油細胞(導管よりやや細い・細胞壁が薄い)が散在する。左上―右下方向の繊維細胞の束は放射組織と呼ばれ、幹の中心から外側に放射状に伸びる。左下―右上方向の繊維細胞の太さが一変しているラインを年輪界という。
クスノキ樹皮と平行な縦断面。上下方向の導管要素・繊維細胞の間を放射組織が垂直に突き抜けている。
クスノキ導管要素の細胞壁

スギスギ(スギ科)の材(走査電子顕微鏡像)。左下が幹の中心方向、右上が樹皮側。上面が横断面(木口 こぐち)、左面が樹皮と平行な縦断面(板目 いため)、右面が樹皮と直交する縦断面(柾目 まさめ)にあたる。
仮導管がびっしりと並び、年輪が明瞭に見える。

スギ樹皮と平行な縦断面。びっしりと並ぶ上下方向の仮導管の間を放射組織が垂直に突き抜けている。
スギの年輪切り倒されたスギの幹の断面。内部の赤っぽい部分は「心材」、その外側の白っぽい部分は「辺材」と呼ばれる。幹が太るにつれて、内側の辺材からしだいに心材へと変化していく。心材の導管・仮導管は詰まって機能を失うが、いっそう緻密になって、植物体を支える役割だけを果たすようになる。

アカマツ古い丸太
アカマツのやや古い丸太。辺材は菌や昆虫の被害がひどいが、やや肌色がかった心材の被害は比較的軽い。
材の主な用途としては、(1)建築家具材・(2)製紙原料・(3)燃料、が挙げられる。木造建築や家具の材料として使われるとき、材の性質はフルに発揮される。材を砕いたチップを製紙の材料として使うときには、セルロースの割合が高いほど良質(白くて黄ばみにくく滑らかで吸水性が良い)なため、化学処理によってセルロース主体の化学パルプとセルロース以外の成分(特にリグニン)を含む処理液(「黒液」)とに分離することが多い。材の有効利用と廃液による水質汚染の防止のためには、黒液を再利用する方が望ましいので、製紙工場の動力源(燃料)として使うこともある。
単子葉植物の木

単子葉植物に木が少ないのは、ごく一部のグループを除いて二次成長をしないためだ。単子葉植物では伸び始めから茎の太さがほとんど変わらず、高く成長した幹でも上下の太さはほぼ同じだ。

モウソウチクシュロ
モウソウチク(イネ科)とシュロ(ヤシ科)

ヤシやタケのように高い幹を持つ単子葉植物では、伸長する前に茎頂分裂組織の細胞分裂で十分な太さになっている(タケノコの太さはタケの太さとほとんど同じ)。それでも、双子葉植物の大木のように太い枝を四方に広げるのには無理があり、ヤシはほとんど枝分かれせず巨大な葉を放射状につけ、タケは上部で細い枝を出すだけだ。だから、二次成長で「木」と「草」を定義するとヤシやタケは「草」になるが、「木」として扱われることも「木でも草でもない」とされることも多い。

タコノキタコノキ(タコノキ科)の気根(支柱根)

単子葉植物の中には、茎を太くする代わりに葉の一部や根を使って茎を補強するものがある。イネ科では葉鞘(後述)がときには何重にも茎を取り巻いていることが多く、タコノキ科では茎からたくさんの根が出て添え木のように茎を支える。

二次成長と樹皮
タブノキタブノキ(クスノキ科)の枝の一部。中央少し上の「ねじ山」は、冬芽のあった場所を示し、その下は3年前、上は2年前に伸長した部分だ。若い枝は緑色だが、年数を経た枝では表面に小さなひび割れ(皮目)ができ、もっと時間が経つと表皮が樹皮に置き換わっていく。

内側が太り続けていても表皮やその下の組織は細胞分裂しないので横に引っ張られ、裂け目が生じる。裂け目ができる頃、あるいはそれより前に、これらの組織では細胞が死んで緑色を失うことが多い。裂け目は、柔組織(根の場合は内皮の内側の柔組織)が細胞分裂して作る組織(樹皮 [bark])で埋め合わされる。やがて表皮やその下の組織は脱落して表面が完全に樹皮に覆われるようになる。いったんできた樹皮も幹が太り続けるとしだいに脱落し、内側で出来る新しい樹皮に交代する。

ヤマザクラ
ヤマザクラ(バラ科)の若い幹。樹皮の成長に連れて横に裂け目(皮目)ができる。イルミネーション用のコードが、樹皮の成長によって覆われてしまった。

ロープや針金で木の幹をゆわえると、樹皮の成長が妨げられ、周りの成長した樹皮によってロープや針金が埋め込まれることがある。

クスノキ
登山道の安全確保用に張られたロープを取り込んだクスノキ(クスノキ科)の樹幹

樹皮のもようは、裂け目の方向や古い樹皮の脱落に仕方を反映していて、種類によって違いがある。

カゴノキ
カゴノキ(クスノキ科)の樹皮は鱗状に剥げ、鹿子まだらになる。

ダケカンバ
ネジキ上: ダケカンバ(カバノキ科)の幹。樹皮は横向きに、皮をむくように剥げる。

左: ネジキ(ツツジ科)の幹。幹が太るときに縦に裂け目が入るとネジキのような樹皮になる。「ネジキ」の名前の通り、裂け目は幹を回り込むようにらせんを描く。


アサダ
アサダ(カバノキ科)

コルクガシ コルクガシ
コルクガシ(ブナ科)の樹皮。形成された樹皮が厚く残り、コルクの原料となる。

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