音楽科における「楽しさ」とは

1.学校教育に求められる音楽科の役割 −「楽しさ」の意味−
これからの学校教育の在り方は、各学校が[ゆとり]の中で特色ある教育を展開し、子供たち一人一人の[生きる力]を培っていくことを基本的な立場としながら、平成10年7月に育課程審議会<答申>によって示された方針に沿って、各教科の改善が図られることとなっている。音楽科においては改善の観点の一つとして、「児童生徒が楽しく音楽にかかわり、音楽活動の喜びを得るとともに、生活を明るく豊かにし生涯にわたって音楽に親しむことを促すことを重視し、表現活動及び鑑賞活動の関連を図りつつ、各学校が創意工夫を生かして、児童生徒一人一人が個性的、創造的な学習活動をより活発に行うことができるようにする」ことが示され、子供と音楽との望ましいかかわりについて述べられている。つまり子供たちが授業の中で自分のよさを発揮するとともに、自らの感性を豊かに働かせながら様々な音楽にかかわり、主体的で創造的な学習活動を活発に行い、楽しい音楽経験を得ることができるようにすることが重視されている。やはり音楽という教科は、表現あるいは鑑賞の活動を通して、子供たちが音楽することの楽しさを直接肌で感じながら、学習活動を展開することが大切である。
 楽しさには快の感情を促す(または不愉快な感情を取り除く)という意味が包含されており、子供が音楽に主体的・創造的にかかわり、自らの表現の意図やイメージ、思いなどを膨らませながら、自分としての音楽表現の仕方を工夫したり、音楽を聴いて積極的にそのよさや美しさを味わったりするような学習活動を効果的に進めるためにも、教師には授業の中で楽しさを実感できる活動を工夫することが求められる。もちろん楽しさには、一定の絶対的な基準というものがあるわけではなく、指導内容や指導過程により様々なレベルで捉えることが必要である。そしてその中で、感覚的に音楽を捉え表現したり鑑賞したりする段階から、リズム・旋律・音の重なりや速度・強弱などの音楽の構造的な側面を知覚し、雰囲気・曲想・美しさなどの感性的な側面を感じ取ることにより、より深まった楽しさを体験できるようにすることが可能となる。

2.音楽活動に求められる子供の姿 −「楽しさ」の深まり−
音楽科の学習では教科の特性上、活動を中心とした取り組みの割合が少なくないが、そこでは、「子供が楽しく活動していればよし」とする風潮が生まれやすく、「活動あって、学習なし」といった焦点(めあて)が定まらない、ただはい回るだけの授業に陥ってしまう危険性がある。音楽する楽しさとは、子供たちが様々な音楽作品に積極的にかかわり、音楽のよさや美しさを感じ取ったり、自分の思いや願いとしての学習のねらいを徐々に実現していく喜び(成就感や満足感)を実感する中で味わうことができるものである。
 子供たちが音楽活動の楽しさを心から味わうことは、継続的な音楽活動を支える原動力となる。日常の授業において、子供たちが様々な音楽に進んで働きかけ、楽しみながら生き生きと音楽活動をおこなっていくためには、まず彼らが音楽とどのように出会うかが大切である。そしてその出合いを通して、表現活動を主とした教材であれば、その曲のよさに気付き、@音楽活動や音楽そのものに興味・関心をもつ、A自分でも演奏してみたいと積極的に音楽に働きかける、B自分の思いやイメージを膨らませ、自分自身の課題を見いだす、Cその課題の解決に向けて活動を深めていく、D自分たちの表現や行動に共感し、音楽を楽しむ、といったプロセスの中で、児童生徒が楽しさの深まりを体験することができると考えられる。音楽活動に伴う児童生徒の心情の変化と楽しさにかかわる要素(質的側面)は学習の進度によって変容していくが、この@からDのプロセスの中で、「音楽への興味・関心・態度」、「音楽的な感受や表現の工夫」、「表現の技能」、「鑑賞の能力」といった四つの評価の観点によって示された音楽科で求める資質・能力を働かせながら学習活動が展開される。
(平成15年度:福岡市教育センター:音楽科研究報告書より)