簡易4D2Uシステム


ここでは国立天文台の4D2Uプロジェクトより公開された天体ヴューワである mitaka を使って、なるべく安価に、立体映像システムを組んだ例の紹介をする。

System Diagram 全体のシステム図を右に示す。 必要なのは、画像作成用PC(2台)、画像投影用プロジェクタ(2台)、シルバースクリーン、ネットワーク用スイッチ、偏光シート(プロジェクタと観賞用メガネに使用)、LANケーブル(2本)、といったところである。

1.用意したもの

[画像作成用PC]

mitaka を快適に動かすにはかなりハイスペックなPCが必要だが、今回は2台のPCで手軽に立体視を実現するために、大学の情報処理センターで借用できるモバイル用のノートPCを使った。 スペックは次のとおり。

使用したPCのスペック
項目名具体的スペック
機種名富士通 FMV-6120MG3
CPU モバイル Pentium III 1.2GHz
メモリ512MB
HD 30GB
グラフィクス内蔵 Intel 82830M
LCD XGA (1024x768)
ネットワークRealtek RTL8139 10/100Base-TX
重さ1.7kg

[プロジェクタ]

プロジェクタもPC同様に持ち運びしやすい軽いものを大学の情報処理センターから借用した。 スペックは次のとおり。

使用したプロジェクタのスペック
項目名具体的なスペック
機種名エプソン ELP-720
表示サイズXGA (1024x768), UXGA(1280x1024)まで可能
明るさ1500 ANSI ルーメン
重さ1.9kg

[スクリーン]

今回は偏光した光を利用して立体視を実現するために、スクリーンは通常のホワイトスクリーンではなく、シルバースクリーンを使用した。 ホワイトスクリーンでは投影した光が散乱し、偏光が保てないため、散乱の少ないシルバースクリーンが必要だそうである。 しかし、まともなシルバースクリーンは結構なお値段がするため、今回はベニヤ板に模造紙を貼り付け、その上に市販の銀スプレーを吹き付けてシルバースクリーンに仕立て上げた。 使用したスプレーは DIY ショップなどで購入できる、アサヒペンのクリエイティブカラースプレーの90番シルバー(ツヤあり) 300ml を使った(確か 600円程度)。

[偏光シート]

偏光シートはプロジェクタの前に置いて、左右別々に偏光した投影像を作るためと、それを左右別々に見るための立体視用のメガネの両方に使うために、A4程度のシート状のものを使った。 今回使用したのは東急ハンズにあった AS-250 という型番の薄い下敷きくらいの大きさんの偏光シートである(1060円であった)。 これを適当な大きさに切って使用した。

2. 機器のセッティング

  1. ベニヤ板に模造紙を貼り付け、銀スプレーを吹き付けて簡易シルバースクリーンを作成
  2. プロジェクタ2台をシルバースクリーンに向けてセットし、同じ位置・サイズで画面が映るように調整(上に示す画像では横に並べているが、上下に置いてセッティングした方が合わせやすいようだ)
  3. ノートPC2台をスイッチにLANケーブルでつなげて、各々プロジェクタに画面を出すようにする
  4. ノートPCがお互いに通信できるように確認する(IPアドレスは適当に設定してもいいし、2台とも DHCP の設定にしてあれば、DHCP サーバが見つからない場合は適当なアドレスが自動設定される。ファイアウォールソフトなどが入っている場合は設定を見直してコンピュータ名で ping が通るようにしておいた方がよい(今回は Symantec Client Firewall が入っていたので切っておいた)。外部のネットワークにつなぐ必要はない。)
  5. ノートPCに mitaka をインストールし単体で mitaka が動くことを確認
  6. 片方のPCをコントローラとして設定する。例えば右目用の画像作成PCをコントローラにする場合は、設定ファイル mitaka.ini で次のように変更
      [Network]
       NetworkMode = 1
       Controler   = 1 
      [Controler]
       EyeOffset   = 3.2
       EyeCLR      = R
      [Window]
       WinW        = 1024
       WinH        = 768
     
  7. もう一台のPC(今回は左目用とする)の設定ファイルは次のとおり
      [Network]
       NetworkMode = 1
      [Controler]
       EyeOffset   = -3.2
       EyeCLR      = L
      [Window]
       WinW        = 1024
       WinH        = 768
     
  8. コントローラ用のPCでは同期相手を指定する servers.dat ファイルを用意する。内容は相手のPC名(今回は pc-left とする)と通信ポート(今回はデフォルトの 50004)を並べて書く
      pc-left 50004
     
  9. コントローラPCと同期相手PCの両方で mitaka を起動し、ちゃんと画像が同期して動くことと、右目用と左目用の画像がずれて表示されることを確認
  10. 偏光シートをプロジェクタのレンズが隠れる程度の大きさに切り、左目用のものは右に45度回転させた位置で置き、右目用のものは逆に左に45度回転させた位置で置く(液晶プロジェクタの液晶との関係かもしれないが、垂直や真横に置くと色が変わるようだったので、ナナメ45度に傾けて右と左で反対に傾ければ右目用画像と左目用画像の偏光が直交する)
  11. 同じく偏光シートをメガネに使う程度に切り、プロジェクタ用と同様に、右目用と左目用で逆に45度傾けて固定して観賞用のメガネを作る(メガネの土台は硬い工作紙などでよい)
  12. メガネでスクリーンを見て立体的に見えるか確認

3. 具体的な設定例

実際にシステムを組んでみたときの写真を以下に示す。

シルバースクリーン 作成した簡易シルバースクリーン


システム構成例1 システム構成の写真(その1)


システム構成例2 システム構成の写真(その2)


投影画像例 投影画像例。メガネをかけないと、このように2つの画像がずれて表示され2重になったように見える。


投影風景 投影風景例。これを偏光メガネをかけて見る。


4. その他のこと

今回はテスト用のシステムなので、偏光メガネを1つ作っただけだが、同じようなメガネを複数セット作成すれば、オープンキャンパスとかのイベントに使える。

ただし、今回のシステムでは安価にするためにスクリーンのサイズがあまり大きくない。 同時に見るのはせいぜい5人程度にした方がよいだろう。

また、今回使用したPCはスペックがぎりぎりで、起動にかなり時間がかかる上、描画する天体が多い場面ではスムースに描画できなかった。 ある程度快適に見ることができたのは、「すばる」とかの近隣の恒星の配置を立体的に見る場面や、近傍銀河の配置を見る場面(我々の銀河が点になる程度)、くらいである。 我々の銀河全景を見るような場面では画面の書き換えにかなり待たされた。 より高スペックのPCが使えるなら、その方が望ましい。