博士の異常な愛情

―または、いかにして私は大型免許を買い、バイクを買ったか。
(スタンリーキューブリック監督のご冥福をお祈りします) by 金光

  1. 発端

     そもそも今まで乗っていたバイク (CBR250F) に不満のなかった私が大型免許を取ろうと思ったのには2つの理由があった。
     1つは免許が買えるようになったこと(教習所で取れるようになった、とも言う)。 やはり体力のない身としては試験場で試験の前に引き起こしなどをさんざんやらされるのは無理だろうと思っていたし。 こちらの理由にはさらに追い討ちをかけるように先に大型免許を買った金子の一言「1本橋を落ちさえしなければ誰でも取れますよ」というのも効いている。
     もう1つの理由は、いかに気に入っているバイクでも10年を越えると、「次」ということを考えざるを得ない。 しかし昨今国内発売されるバイクを見ていても(特に中型の範囲では)次期車両として「これだ」というものがない。 ただし大型にまで範囲を広げると候補になりうるものがあった。 (どうゆうバイクを求めていたか、という点については後の新車購入の節で触れることにする)
     こうしたことから衰える一方の体力のことを考えて、早急に(40の大台に乗る前に)免許だけでも買っておこうと思い立ったわけである。 問題となる妻の説得の方は「とりあえず免許を取るだけ」ということで少々オーバーしても10万はかからないだろうということをボーナス時期に持ち出したので、特に問題もなくOKとなった。

  2. 教習所

     そうと決まればまずは教習所選びである。 当時 (1997年6月) はやっとあちこちの教習所が大型教習を始めたばかりの時期だったため結構混んでいるようだった。 候補になったのは勤務先(大学)から近い遠賀と自宅(福間町)から近いレインボーであったが、金子の話を聞いてまず遠賀に問い合わせたところ入校が7月になるということであった。 一方レインボーに問い合わせると、すぐに入校できるとのことで、元が2輪専門校だったしこの機会にちゃんと鍛えてもらった方がいいかと思い、結局6月17日にレインボーに入校手続き、21日に入校とあいなった。
     教習車は CB750。最初のセンタースタンドがけや引き起こしではそれほど重く感じなかったが押し歩きはやっぱりきつい。 いったん乗り出してしまうと非常に乗りやすい。 卒業までにVFR750にも乗ったが、やはり新しいバイクはそれなりの進化をしているようでCB750の方が好感が持てた。
     この後、なかなか思うように予約が取れず、7月10日までの2週間あまりでなんとか補習もなく教習を終える。 教習の中では何時間目だったかにやったUターンの練習がどうしてもうまくできず(小回りができず大回りになってしまう)、これは補習がつくかな、と覚悟したが教習生が多かったせいか、なんとか補習にならずにすんだようだ。
     卒業検定は小雨がぱらつくあいにくの天気であったが、かえって急制動などの基準が甘くなるからいいか、と思い順番待ちをする。 ここんとこ試験をする方を長くやってたこともあり試験を受ける方に回るのが久しぶりで緊張したが、大きなミスをおかすこともなくなんとか完走。 結果は無事一発で合格であった。 (この時受験したのは結構大勢で20人以上いたと思うが落ちたのはコースからはみ出したりした不幸な人数人で、大多数が合格していた。) ちなみに合格の後やった安全性テスト(心理テストみたいなもん)の結果は怖いほど自分の運転傾向を当てられていて、いかに安全運転度が低いかということを改めて認識させられてしまった(安全運転度Dだそうだ)。
     7月15日に野間に免許をもらいに行き、めでたく(法律上は)すべてのバイクに乗れるようになった。 かかったお金は教習料81,600円+検定料4,900円(+税)に交付料などで約9万円で収まったことになる。

  3. 車種選定

     免許が取れたら次はバイクである。 とりあえず資金繰りのことは後回しにして候補車を考えた。 自分のバイクの好みを一言でいうと、(レプリカではない)「スーパースポーツ」というのが最も近い。 すなわち「いざとなれば(あるいは腕さえあれば)他のバイクにためをはれるだけの動力性能・運動性能を持つが、レプリカやピュアスポーツほどとんがってなくてツーリングや街乗りにも対応できる」バイクということである。 中型の最初からカウルつきのバイクを乗り継いできたこともあり、やはりネイキッドは避けたい。 (ちなみに今までのバイク歴が VT250F(初期型); VT250F(U型); CBR250F であることをみてもらえばある程度わかってもらえるか?)
     こうした観点から見ると前述のとおり中型までの範囲では適当なバイクがあまり見当たらない。 (しいてあげればスズキのアクロスや RF あたりが近いが、やっぱりホンダエンジンでなくっちゃ。) かといって自分の体力を考えるとリッターバイクは重さや大きさの点で手に余る。 いったん買ったら、そう簡単には買い替えできないだろうから体力が落ちても長く乗りつづけられるバイクである必要がある。
     こうした点から前から眼をつけていたのが CBR600 である。 国内では全く人気のない 600 であるが雑誌の記事などから漏れ聞くとヨーロッパなどでは結構人気のあるクラスでメーカーとしても力が入っている。 SS600(Super Sports 600)としてのレースも盛んなようだ。 CBR600 の場合は国内仕様も販売されているが、例によってメーカーの自主規制とやらで 69馬力に押さえられている。 長く乗るならやはり後悔しないようにフルパワーの逆車だ、と思ってねらいをつけていたのである。 (しっかし、こんなに大型免許保持者が増えて買いたい人は逆輸入でフルパワー版を買うんだから自主規制なんて警察へのポーズ以外に意味ないのにね。)
     これらを考えていたのは1997年の秋であるが、当時のバイク雑誌を見ると CBR600 は近いうちにモデルチェンジの予定が入っていた。 カウルは欲しいが当時の CBR600 のインテグレートタイプのカウルはあまり好きではなかった私はどうせ資金繰りのこともあるしモデルチェンジまで待とうと待機に入った。 (インジェクションになるといううわさもあったし、もし本当ならそちらの方が私の好みにあうし。)

  4. バイク購入

     年が明けて1998年。 春先からバイク雑誌に載るスクープ記事を見ながら待つことしばし。 ついに 9月のミュンヘンショーで新型の CBR600 が発表された。 9月末に出るバイク雑誌でスペックや外見を見て気に入った私はすぐに近くのバイク屋に行き、発注しようとした。 しかしこの時点ではまだ発表されたばかりで値段とかもわからないということでバイク屋からの連絡を待ち、正式に発注したのは11月14日になっていた。 納車予定は3月始め。 お値段は車両価格が940,000円、諸費用や今田も書いていたヘッドライトの交換費などを含めて1,100,000円。 実際には CBR250F を下取りに出したのでこれから40,000円引きということにあいなった。
     おっと忘れていたが、これだけの金額になれば当然妻の説得が必要である。 幸い免許を取ってから時間をかけてじわじわと話を出していたのがよかったようで、大きな抵抗もなく、OKが取れた。 (このOKが覆らないうちに、と冬のボーナスが入ったら速攻で1,000,000円を別口座に移したのは言うまでもない。) これにはバイクに次々と金を使っている(ように見える)SC城山の諸氏の実例が役にたったようだ。 特に「バイクのために家を建てた、あるいは、バイク用のガレージを建てるついでに家を建てた」と称される某氏や、「広大な敷地に逆車を含む何台ものバイクを置く、坊主まるもうけ(に見える)」の某氏などのI氏達の例は役にたってくれたようだ、ありがとう。 (だって、「あの人たちに比べればよっぽどましでしょ」という説得ができたんですもの。)
     さらに年が明けて1999年。 手続きの遅れでバイクがバイク屋に来たのが3月中旬。 ところが3月の中旬から下旬にかけてはこちらが出張などで引き取りに行けない。 ということで最終的に納車日は年度もおしつまった3月31日となった。 スペックは、

    といったところである。 今田も書いてたとおり6ヶ国後対応のマニュアルがついていた。

    CBR600F
  5. インプレッション

     慣らしの最初の方ではちょっとしたトラブルが2つほどあった。 最初はバイク屋のミスでステップを止めているボルトの1つが止めてなかったためにリヤブレーキを引きずるような形になり、それに気づくのが遅れたため慣らし中としては回したくない回転数まで一瞬回ってしまったこと。 もう1つはシート高がだいぶ高くなっているのに、今までの CBR250 同様のやり方でちょっと高くなった家の敷地に上げようとしたためにバランスをくずして立ちごけしたこと。 後者の時は運悪く門の硬いところがカウルにあたったため結局カウルを交換するはめになり+数万円の出費になってしまった。
     さて、実際に乗ろうとしてまず感じたのは、軽い、ということである。 勿論今までの CBR250 ほどではないが、ちょっと押し歩こうとした時の感触は教習所の CB750 あたりとは比べ物にならない。 ヤマハの YZF-R6 が軽いと評判だが CBR600 はセンタースタンド装備にもかかわらず乾燥でわずか1kgしか違わないのだ。 車体もタンクあたりのボリュームは 600相応であるが、シート高の高さのためつま先立ちになってもこの軽さなら何とかなりそうである。
     乗り出してみると慣らし中の低回転でもパワーが実感できる。 ちょっとアクセルをひねっただけで車体が前に出ようとする感覚とでも言えばいいだろうか。 慣らしを少しでも早く終えるために4月11日(日)にバイク屋のツーリングに混じって阿蘇まで行った。 この時のメンバーはほとんどがリッタークラス(TL1000 や VTR1000, ZRX1100など)で、最小排気量のがHyperVTECの CB400といったところであったが、慣らし中で5000回転程度に抑えていても苦もなくついていくことができた。 (ちなみにこの時途中でよったのがCPでも今田が紹介していた「世界のモーターサイクル&懐しの昭和展」であった。) この時のツーリングでやっと500kmくらいまで走行距離がいった。
     この後、通勤などに利用してほそぼそと距離を伸ばし(5月の練習会にも行ったし)、6月末にやっと1,000kmを超えたのでオイル&フィルター交換をして慣らしの前半を終了。 そこから少しずつ回転をあげやっと最近10,000以上回せるようになったところである。 といっても CBR1100XX ほどではないが、うかつに10,000も回せばすぐに三桁の速度になってしまう(6速では4,500回転で約100km/hである)ので回転を上げる状況には気をつける必要があるが。 なんせメーターは300km/hフルスケール。 上の計算によれば6速でレッドゾーンの13,500がちょうど300km/hだが、雑誌のインプレッションでは、さすがに実際にはメーター読みでも260−270km/hあたりのようである。 (自分ではこんな速度域は試せない。) この後、OB会に行けばやっと慣らしも終了できるだろう。

     最後に CBR600F の気に入った点と気になる点をまとめておこう。

といったあたりで、特にスタイルは非常に気に入っているので、また10年以上は乗ることになるでしょう。