World Coordinate System

基本 FITS では座標表現に関しては簡単な変換に対応したいくつかのキーワード (CRVALn, CRPIXn, CDELTn, CTYPEn, CROTAn) しか定義されておらず、実際の天球座標とデータ配列の間の対応を表現するには不十分な点があった。 それを補うためにより一般的な表現方法として提案されたのが WCS (World Coordinate System) であり現在は FITS Standard 3.0 でも解説されている(実際の歴史的な経緯は第1部の歴史を参照)。

ここで World Coordinate (世界座標) とは、多次元のパラメータ空間のうち何らかの物理的測量値、例えばスペクトル中の波長値とか物理空間中の方向を表す緯度経度とか、を提供する座標のことを指し、世界座標と FITS ファイル中の N次元データ配列の各データ値を対応させるためのキーワードなどを含む規程集が WCS である。

2002年 ~ 2005年に World Coordinate の表現方法を扱った Paper (WCS Paper I) 、天球座標の表現を扱った Paper (WCS Paper II)、スペクトル関係の Paper (WCS Paper III) が正式に IAU FWG で認められ、2013年に時間を扱った Paper (WCS Paper IV) が認められた。 機器関係の歪みを扱った Paper (WCS Paper V ?) もドラフト段階のものが公開されている。 ここでは正式論文である WCS Paper I, II, III, IV から必要な部分の概要を解説する(機器の歪みを扱った Paper V はドラフトのため扱わないので原論文を参照のこと)。 原論文は次のとおり。 (日本国内でも入手可能 (2.3 節参照))





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Osamu Kanamitsu
2017-02-23