H10学習指導要領 生物関係部分
小生活 | 小理科 | 中理科 | 高・理科基礎 | 高・理科総合B | 高・生物I | 高・生物II

学習指導要領等(文部科学省)から、H10学習指導要領(新指導要領)生物関連部分を抜粋し(もとの文はこちら)、表形式にまとめたものです。過去の学習指導要領は、過去の学習指導要領(教育情報ナショナルセンター跡地)で参照することができます。

植物形態学にかかわる部分は青字で表わしてあります。


小学校生活
1.目標

自分と身近な動物や植物などの自然とのかかわりに関心をもち,自然を大切にしたり,自分たちの遊びや生活を工夫したりすることができるようにする。

2.内容 3.内容の取り扱い
[1・2年]
身近な自然を観察したり、季節や地域の行事にかかわる活動を行ったりして、四季の変化や季節によって生活の様子が変わることに気付き、自分たちの生活を工夫したり楽しくしたりできるようにする 地域の人々、社会及び自然を生かすとともに、それらを一体的に扱うように学習活動を工夫する
校外での活動を積極的に取り入れる
身の回りの自然を利用したり、身近にある物を使ったりなどして遊びを工夫し、みんなで遊びを楽しむことができるようにする
動物を飼ったり植物を育てたりして、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心をもち、また、それらは生命をもっていることや成長していることに気付き、生き物への親しみをもち、大切にすることができるようにする 2学年にわたって取り扱うものとし、動物や植物へのかかわり方が次第に深まるようにする
小学校理科
1.目標
3年 4年 5年 6年
身近に見られる動物や植物を比較しながら調べ 身近に見られる動物の活動や植物の成長を季節と関係付けながら調べ 植物の発芽から結実までの過程、動物の発生や成長などをそれらにかかわる条件に目を向けながら調べ 生物の体のつくりと働き及び生物と環境とを関係付けながら調べ
見いだした問題を
興味・関心をもって 計画的に 多面的に
追究する活動を通して
生物を愛護する 生命を尊重する
態度を育てるとともに
生物の成長のきまりや体のつくり、生物同士のかかわり 動物の活動や植物の成長と環境とのかかわり 生命の連続性 生物の体の働き及び生物と環境とのかかわり
についての見方や考え方を養う
2.内容 3.内容の取り扱い

[3年] 身近な昆虫や植物を探したり育てたりして、成長の過程や体のつくりを調べ、それらの成長のきまりや体のつくり及び昆虫と植物とのかかわりについての考えをもつようにする。

昆虫の育ち方には一定の順序があり、その体は頭、胸及び腹からできている 飼育、栽培を通して行う。2種類を扱う。幼虫の体のつくりは扱わない。成虫の体のつくりを調べるとき、人の目などの感覚器官と対比して扱うようにする。
植物の育ち方には一定の順序があり、その体は根、茎及び葉からできている 飼育、栽培を通して行う。夏生一年生の双子葉植物のみ3種類を扱う
昆虫には植物を食べたり、それをすみかにしたりして生きているものがいる

[4年] 身近な動物や植物を探したり育てたりして、季節ごとの動物の活動や植物の成長を調べ、それらの活動や成長と季節とのかかわりについての考えをもつようにする。

動物の活動は、暖かい季節、寒い季節などによって違いがある 1年を通して数種類の動物の活動を観察する
植物の成長は、暖かい季節、寒い季節などによって違いがある 1年を通して数種類の植物の成長を観察する。夏生一年生植物のみを扱う。その際、それらと落葉樹を対比することによって植物の個体の死について触れる。

[5年] 植物を育て、植物の発芽、成長及び結実の様子を調べ、植物の発芽、成長及び結実とその条件についての考えをもつようにする。
魚を育てたり人の発生についての資料を活用したりして、卵の変化の様子を調べ、動物の発生や成長についての考えをもつようにする。

植物は、種子の中の養分を基にして発芽する でんぷんだけを扱う
植物の発芽には、水、空気及び温度が関係している 土を発芽の条件や成長の要因として扱わない
植物の成長には、日光や肥料などが関係している
花にはおしべやめしべなどがあり、花粉がめしべの先に付くとめしべのもとが実になり、実の中に種子ができる おしべ、めしべ、がく及び花びらを扱うことにとどめる。受粉については、虫や風が関係していることに触れるにとどめる
魚には雌雄があり、生まれた卵は日がたつにつれて中の様子が変化してかえる 受精に至る過程は取り扱わない
人は、母体内で成長して生まれる

[6年] 人及び他の動物を観察したり資料を活用したりして、呼吸、消化、排出及び循環の働きを調べ、人及び他の動物の体のつくりと働きについての考えをもつようにする。
動物や植物の生活を観察し、生物の養分のとり方を調べ、生物と環境とのかかわりについての考えをもつようにする。

体内に酸素が取り入れられ、体外に二酸化炭素などが出されている 体内に取り込まれた物質の使われ方は扱わない
食べ物は、口、胃、腸などを通る間に消化、吸収され、吸収されなかった物は排出される
血液は、心臓の働きで体内を巡り、養分、酸素及び二酸化炭素を運んでいる 心臓の拍動と脈拍が関係することにも触れる
植物の葉に日光が当たるとでんぷんができる
生きている植物体や枯れた植物体は動物によって食べられる 食物連鎖などは取り扱わない
生物は、食べ物、水及び空気を通して周囲の環境とかかわって生きている


中学校理科[第2分野]
1.目標

(1) 生物とそれを取り巻く自然の事物・現象に対する関心を高め、その中に問題を見いだし意欲的に探究する活動を通して、規則性を発見したり課題を解決したりする方法を習得させる。

(2) 生物や生物現象についての観察、実験を行い、観察・実験技能を習得させ、観察、実験の結果を考察して自らの考えを導きだし表現する能力を育てるとともに、植物や動物の生活と種類、生物の細胞と生殖などについて理解させ、これらの事象に対する科学的な見方や考え方を養う。

(4) 生物とそれを取り巻く自然の事物・現象を調べる活動を行い、自然の調べ方を身に付けるとともに、これらの活動を通して自然環境を保全し、生命を尊重する態度を育て、自然を総合的に見ることができるようにする。

2.内容 3.内容の取り扱い

(1) 植物の生活と種類
身近な植物についての観察、実験を通して、生物の調べ方の基礎を身に付けさせるとともに、植物の体のつくりと働きを理解させ、植物の種類やその生活についての認識を深める。

(3) 動物の生活と種類
身近な動物についての観察、実験を通して、動物の体のつくりと働きを理解させるとともに、動物の種類やその生活についての認識を深める。

(5) 生物の細胞と生殖
身近な生物についての観察、実験を通して、細胞のレベルで見た生物の体のつくりと生殖について理解させるとともに、親の形質が子に伝わる現象について認識させる。

(7) 自然と人間
微生物の働きや自然環境を調べ、自然界における生物相互の関係や自然界のつり合いについて理解し、自然と人間のかかわり方について総合的に見たり考えたりすることができるようにする。

校庭や学校周辺の生物の観察を行い、いろいろな生物が様々な場所で生活していることを見いだすとともに、観察器具の操作、観察記録の仕方などの技能を身に付け、生物の調べ方の基礎を習得させる 器具を用いた観察では、細胞の構造などについては「細胞と生殖」で扱うので深入りしない。植物を中心に取り上げ、水中の微小生物についても簡単に扱う
いろいろな植物の花の観察を行い、その観察記録に基づいて、花の基本的なつくりの特徴を見いだすとともに、それらを花の働きと関連付けてとらえる 器具を用いた観察では、細胞の構造などについては「細胞と生殖」で扱うので深入りしない。被子植物を中心に取り上げ、裸子植物は簡単に扱う。「花の働き」については、受粉によって胚珠が種子になることを扱う程度とし、受精などは「細胞と生殖」で扱う
いろいろな植物の葉、茎、根の観察を行い、その観察記録に基づいて、葉、茎、根の基本的なつくりの特徴を見いだすとともに、それらを光合成、呼吸、蒸散に関する実験結果と関連付けてとらえる 器具を用いた観察では、細胞の構造などについては「細胞と生殖」で扱うので深入りしない。
花や葉、茎、根の観察記録に基づいて、それらを相互に関連付けて考察し、植物が体のつくりの特徴に基づいて分類できることを見いだすとともに、植物の種類を知る方法を身に付ける 植物が種子をつくる植物と種子をつくらない植物に分けられることを扱うが、種子をつくらない植物については、その存在を指摘する程度にとどめる
身近な動物の観察を行い、その観察記録に基づいて、動物の体のつくりと働きとを関連付けてとらえる 脊椎動物を取り上げる。動物を観察し、食物のとり方、運動・感覚器官の発達、体の表面の様子や呼吸の仕方の違いに気付かせる
動物が外界の刺激に適切に反応している様子の観察を行い、その仕組みを感覚器官、神経系及び運動器官のつくりと関連付けてとらえる 脊椎動物を取り上げる。各器官の働きを中心に扱い、構造の詳細は扱わない。
消化や呼吸、血液の循環についての観察や実験を行い、動物の体には必要な物質を取り入れ運搬し、不要な物質を排出する仕組みがあることを観察や実験の結果と関連付けてとらえる 脊椎動物を取り上げる。各器官の働きを中心に扱い、構造の詳細は扱わない。心臓の構造は扱わない。「消化」については、消化に関係する一つ又は二つの酵素の働きを取り上げる。「呼吸」については、外呼吸を中心に取り上げるとともに、細胞の呼吸については簡単に扱い、呼吸運動は扱わない。「血液の循環」に関連して、血液成分の働き、腎臓や肝臓の働きにも触れる
身近な動物の観察記録に基づいて、体のつくりや子の生まれ方などの特徴を比較し、動物が幾つかの仲間に分類できることを見いだす 動物が脊椎動物と無脊椎動物に分けられることを扱うが、無脊椎動物については、その存在を指摘する程度にとどめる
いろいろな細胞の観察を行い、生物の体が細胞からできていること及び植物と動物の細胞のつくりの特徴を見いだす
体細胞分裂の観察を行い、その過程を確かめるとともに、細胞の分裂を生物の成長と関連付けてとらえる
身近な生物の殖え方を観察し、有性生殖と無性生殖の特徴を見いだすとともに、生物が殖えていくときに親の形質が子に伝わることを見いだす 有性生殖の仕組みを減数分裂と関連付けて簡単に扱うこと。その際、遺伝の規則性は扱わないこと。「無性生殖」については、単細胞の分裂や挿し木、挿し芽を扱うにとどめる
微生物の働きを調べ、植物、動物及び微生物を栄養摂取の面から相互に関連付けてとらえるとともに、自然界では、これらの生物がつり合いを保って生活していることを見いだす 生産者、消費者及び分解者の関連を扱い、土壌動物については簡単に扱う
学校周辺の身近な自然環境について調べ、自然環境は自然界のつり合いの上に成り立っていることを理解するとともに、自然環境を保全することの重要性を認識する 学校周辺の生物や大気、水などの自然環境を直接調べたり、記録や資料を基に調べたりする活動などを適宜行う


高等学校理科基礎
1.目標

科学と人間生活とのかかわり、自然の探究・解明や科学の発展の過程について、観察、実験などを通して理解させ、科学に対する興味・関心を高めるとともに、科学的な見方や考え方を養う。

2.内容 3.内容の取り扱い

(2) 自然の探究と科学の発展
自然への疑問や興味に基づく客観的な観察と新しい発想が科学を発展させ、自然の見方を大きく転換し、展開させたことについて理解させる。

生命を探る 細胞の発見と細胞説 顕微鏡を用いた身近な生物の観察を通して、すべての生物を構成する基本的な単位が細胞であること、細胞の発見から細胞説が確立されたこと及び生物は自然発生をしないことを扱い、それらに関して顕微鏡の発明が重要な役割を果たしたことにも触れる
進化の考え方 進化論が提唱されるに至った過程や論争の考察を通して、地球上に生活する多様な生物が進化の過程を経て現在に至ったことを進化の事例とともに扱うこと。その際、分子進化については扱わない


高等学校理科総合B
1.目標

自然の事物・現象に関する観察、実験などを通して、生物とそれを取り巻く環境を中心に、自然の事物・現象について理解させるとともに、人間と自然とのかかわりについて考察させ、自然に対する総合的な見方や考え方を養う。

2.内容 3.内容の取り扱い

(2) 生命と地球の移り変わり
生命の星としての地球の変遷をたどり、生命の出現と生物の変遷は地球環境の変化とかかわっていること及び生物は遺伝という共通の性質をもち、親の形質を子に伝えていることについて理解させる。

(3) 多様な生物と自然のつり合い
地球上の様々な自然環境は、変化するとともに、その過程で平衡が保たれ、そこで多様な生物が生活していることについて理解させる。

(4) 人間の活動と地球環境の変化
生物とそれを取り巻く環境の現状と課題について考察させ、人間と地球環境とのかかわりについて探究させる。

地球上の光合成生物の誕生から生物が陸上に進出し現在の生物に至るまでの変遷について理解させる 生物の変遷の羅列的な扱いはしない。また、大気の組成の変化と生命活動との相互のかかわりについても扱う。光合成生物の出現と関連し、太陽放射エネルギーについても扱い、その際、光の種類と性質にも触れる
生物には親から子へ形質を伝える遺伝現象があり、そこには遺伝子の存在という共通性があることを理解させる メンデルの法則のうち、優性の法則と分離の法則を扱うが、遺伝子については遺伝子の本体がDNAであることを指摘する程度にとどめる
地球には多様な生物が存在していること及びそれらの生活の多様性について理解させる 地球には様々な動物や植物が存在すること及びそれらがそれぞれの環境の下で多様な生活の仕方をしていることを具体的な例を通して扱う。その際、無脊椎動物及び種子をつくらない植物を含めて扱う
生物とそれを取り巻く環境は種々の生態系としてとらえることができること及び生態系における生物と環境とのかかわりを理解させる 地球上の生物とそれを取り巻く環境との関係が、陸上や水中のそれぞれに特徴的な生態系としてとらえられることを扱い、食物網については簡単な扱いにとどめる。その際、生態系における炭素、窒素の循環やエネルギーの流れも扱う。また、人間も構成要素として含め、地球そのものが一つの大きな生態系とみなせることも扱う
生物とそれを取り巻く環境の現状と課題について考察させ、人間と地球環境とのかかわりについて探究させる 生徒の興味・関心等に応じて、水や大気の汚染、植物の遷移現象、地球温暖化など生物とそれを取り巻く環境に関する身近な課題を取り上げ、人間と環境とのかかわり、地球環境を保全することの重要性などを平易に扱う


高等学校生物I (高校理数生物・前半)
1.目標

生物や生物現象についての観察、実験などを行い、自然に対する関心や探究心を高め、生物学的に探究する能力と態度を育てるとともに基本的な概念や原理・法則を理解させ、科学的な自然観を育成する。

2.内容 3.内容の取り扱い

(1) 生命の連続性
細胞、生殖と発生及び遺伝について観察、実験などを通して探究し、生物体の成り立ちと種族の維持の仕組みについて理解させ、生命の連続性についての見方や考え方を身に付けさせる。

(2) 環境と生物の反応
環境と生物の反応の間に見られる仕組みを観察、実験などを通して探究し、生物は、個体として外部環境の変化に対応して、安定した内部環境を維持したり、成長や器官の分化を調節したりすることを理解させる。

細胞の機能と構造 細胞への物質の出入りや酵素も扱う。酵素については、酵素が細胞内や細胞外で作用することにより、生物現象を維持していることに触れる程度にとどめる。また、原核細胞の構造にも簡単に触れる
細胞の増殖と生物体の構造 体細胞分裂によって様々な機能をもつ組織や器官をつくることにも触れるが、基本的な事項にとどめ、羅列的な扱いはしない
生殖細胞の形成と受精 有性生殖を中心に扱い、生活環は扱わない
発生とその仕組み 卵割や発生様式の羅列的な扱いはしないこと。発生の仕組みを扱うに当たっては、探究の過程に重点を置き、平易に扱う。分化についての分子生物学的な扱いはしない
遺伝の法則 遺伝子の相互作用も扱うが、代表的な二つ又は三つの例にとどめる
遺伝子と染色体 遺伝子の連鎖と組換えも扱うが、二重乗換えには触れないこと。また、DNAの構造については二重らせん構造に触れる程度にとどめる
体液とその恒常性 体液の働きとその循環に触れ、恒常性の維持の原理についても代表的な例に基づいて扱う。生体防御については、平易に扱う。その際、人の健康との関連にも簡単に触れる
刺激の受容と反応 受容器は代表的な一つ又は二つの例を中心に扱う。神経の興奮については初歩的な事項にとどめ、その仕組みは扱わない。脳を扱う場合、つくりについては深入りしない。動物の行動を扱う場合は一つ又は二つの例に基づいて、行動の発現する仕組みを扱う
植物の生活と環境 水分の吸収、移動や光合成等と環境との関係を扱うが、光合成の仕組みは扱わない
植物の反応と調節 植物の発芽、成長、花芽形成等と環境との関係について探究の過程を重視して扱う


高等学校生物II(高校理数生物・後半)
1.目標

生物や生物現象についての観察、実験や課題研究などを行い、自然に対する関心や探究心を高め、生物学的に探究する能力や態度を育てるとともに基本的な概念や原理・法則の理解を深め、科学的な自然観を育成する。

2.内容 3.内容の取り扱い

(1) 生物現象と物質
生物体内の化学変化やエネルギー変換、様々な生物現象を支えるタンパク質や核酸などの働きを観察、実験などを通して探究し、生命を維持する共通の原理を理解させ、生物現象を分子レベルでとらえることができるようにする。

(2) 生物の分類と進化
生物の分類と系統及び進化の過程とその仕組みを観察、実験などを通して探究し、生物界の多様性と歴史的変遷を理解させ、分類と進化についての見方や考え方を身に付けさせる。

(3) 生物の集団
個体群の構造と維持、生物群集と生態系について観察、実験などを通して探究し、生物を集団のレベルでとらえて生物と環境とのかかわりについて理解させ、自然界における生物集団についての見方や考え方を身に付けさせる。

(2)と(3)はいずれか一方を選択

生物体内の化学反応と酵素 代謝を理解するために必要な最小限の化学の基礎知識に触れる
同化と異化 同化と異化の例として光合成や呼吸などの仕組みを扱うが、反応系の物質の羅列的な扱いはしない
タンパク質の機能 免疫や筋収縮、細胞間情報伝達などをタンパク質の機能の観点から平易に扱う
遺伝情報とタンパク質の合成 遺伝情報、遺伝子の複製、タンパク質の合成などを核酸の構造に基づいて平易に扱う。その際、DNAやRNAの分子構造は、模式的に示す程度にとどめる
形質発現の調節と形態形成 形質発現の調節、細胞の分化や形態形成の仕組みの初歩的な事項を扱う
バイオテクノロジー 遺伝子操作や細胞融合などの例を通して平易に扱う
生物の分類 分類の基準を理解する上で必要な程度にとどめ、各分類群の羅列的な扱いはしない
生物の系統 多様な生物が存在することについて、それらの系統関係を探究的に考察する過程を重視して扱う
生物界の変遷 生命の起源及び進化の過程の概要を扱う
進化の仕組み 生物の変異、進化の証拠やその要因などを扱うが、集団遺伝については初歩的な事項にとどめる。進化説については代表的なものを中心に扱う
個体群の維持と適応 個体群の成長の様式や個体群が様々な環境に適応して維持される仕組みなどについて、基本的な事項を中心に平易に扱う
物質生産と植物の生活 光合成による植物の物質生産と植物の形態や生活との関連などを、代表的な例を通して扱う
生物群集の維持と変化 生物群集内での個体群間の相互作用、植物群落の遷移や生態分布などを扱う
生態系とその平衡 食物網や物質循環・エネルギーの流れなどについてそれぞれ代表的な例を通して扱う。環境の保全については、羅列的な扱いはしない

H10指導要領に準拠した教科書

新学習指導要領に基づく検定をH12~14年度にパスした小中高理科(生物関係)の教科書の出版元は、教科書目録によると、次の通りです。

東京書籍 小理科 中理科 高理科基礎 高理科総合B 高理科総合B 高生物I 高生物I 高生物II
大日本図書 小理科 中理科 高理科基礎 高理科総合B
高生物I
高生物II
学校図書 小理科 中理科
教育出版 小理科 中理科
高理科総合B
高生物I・II
新興出版社
啓林館
小理科 中理科
高理科総合B
高生物I 高生物I 高生物II
信濃教育会
出版部
小理科
実教出版

高理科基礎 高理科総合B
高生物I
高生物II
数研出版

高理科基礎 高理科総合B
高生物I 高生物I 高生物II
第一学習社


高理科総合B
高生物I 高生物I 高生物II
三省堂


高理科総合B
高生物I
高生物II


理科指導要領・教科書の動向
(2005/03/01)
取りあえず、個人的なメモ程度のまとめです。
学習指導要領と教科書

初等中等教育での各科目の内容は、学習指導要領(Wikipedia)で規定される。

個々の教師が行なう授業においても、指導要領からの逸脱は、教育委員会の裁量次第では、懲戒解雇を含む懲戒の理由になり得る[学習指導要領の法規性(法的拘束力)]、という最高裁判例がある(少なくとも、文部科学省・各教育委員会は、指導要領の法規性と教育委員会の裁量権は確立ずみ、という立場を取っている)。

教科書の内容は指導要領に準拠することが求められ、教科書検定により実質的な規制を受ける。

ゆとりと厳選・基礎基本

学習指導要領は、およそ10年ごとに全面的に改訂される。H10学習指導要領(1998)では、理科に限らず、旧来の教科の時間数が減り、また理科においては、内容の思い切った削除または削減(教育業界では、両者を併せて「厳選」と呼ぶ。また、以前は「精選」と呼ばれていたことが多かった)が行なわれた。「厳選」を経て残った内容は、「基礎・基本」と呼ばれた。

理科では、削減された範囲の多くは上の学年・学校へと先送りされた。生物学分野における象徴的な例としては、「遺伝の法則性」「進化」などが中学から高校に先送りされ、遺伝の法則性は「理科総合B」または「生物I」、進化は「理科基礎」「生物II(生態との選択)」に移行した。

中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」: これからの学校教育の在り方 (1996/07)では、生物関連で「厳選」すべき事項として次のような内容があげられている。

また、単純な範囲の削減に止まらず、学習の順序が一律に定められている点、扱う生物の種類数の上限や「扱ってはならない事項」について示す「歯止め規定」の精密化が図られている。

指導要領の改訂に関わった教育専門家によれば、「厳選」の真の目的は、内容を減らすことではなく「基礎・基本」に時間を掛けて取り組むことであり、「歯止め規定」はそれを裏打ちするものである。

H10学習指導要領に準拠する最初の教科書の検定(小中の教科書は2000年に検定・2002年から使用、高校教科書は2001年に検定・2003年から使用)では、指導要領からの逸脱に対してとりわけ厳しい姿勢が取られ、要領にない内容については、図表内や囲み記事であっても厳しく削除を求められたという(リンク@科教協東京支部ウェブサイト)リンク2@高等教育フォーラム@Internet Archive・リンク3@高等教育フォーラム@Internet Archive)。

これらの変更点は、実務的には前回(H1)の改訂の方向性を継承しており、また、理念的には中央教育審議会第一次答申(1996)が示した2つのキーワード(最も端的に示されたページの一つ)を反映している。

H10学習指導要領には、下のような改革が導入された。「厳選」によって減らされた授業時間数は、実質的にはそのための時間の確保に充てられた。だから、「厳選」は、審議会が示した理念の反映と見ることもできるが、時間の捻出のための「つじつま合わせ」と見ることもできる。

H10指導要領への批判

H10学習指導要領は、改定内容が伝えられた当初から、さまざまな批判を受けた。もともと、H1指導要領からの内容削減の流れが、いわゆる「学力低下」の原因になっているという潜在的な不満があって、H10指導要領がそれを助長すると予想する意見が多かった。

また、理科の場合は「理科離れ・理系離れ」(Wikipedia)と呼ばれる傾向も、不満を加速したかも知れない。

ただし、H10指導要領への不満は、批判者の立場や政治的傾向の違いを反映していて、けっして一枚岩ではなかった。

「科学技術立国」を担うエリート層が育たなくなるのではないかと心配する声が、企業経営者や先端研究者からは上がった。教育関係者の間では、むしろ、義務教育を通じて共有するべき教養が減ることが知的な格差を拡大するのではないかと心配する声が多かった。

また、教員を中心とした理科教育関係者のあいだでは、目的・理念と手段がつながりを欠く点、「厳選」の拙劣さ、教科書検定での「歯止め規定」の適用の不合理さへの不満が大きく、それを解消すべく作成された「検定外教科書」が話題となった。

「確かな学力」

新指導要領完全実施が迫った2002年1月に、文部科学省は、確かな学力の向上のための2002アピール「学びのすすめ」(教育委員会向け)を公表した。

アピールの前置きに当たる文章の中では、おおよそ次のようなことが述べられている

しかし、このアピールは、文部科学省の方針の揺らぎ、あるいは軌道修正の前触れとして受け取られ、実際にもそうとしか取れない内容を含んでいた。

特に、教科書に関しては、学習指導要領の内容は全ての児童生徒が学ぶ最低基準を示すもの(学習指導要領の「基準性」)で、内容を十分理解した児童生徒は、「発展的な学習」(指導要領を越えた内容の学習)をするべきだ、と書かれ、次期の教科書検定では「発展的内容」(指導要領にない内容)を許容するとされた。これは、教科書検定における当初の方針を覆している(2002~2003年に検定が行なわれる高校教科書では20%くらいまでの「発展的内容」(指導要領にない内容)も認められる、と新聞報道で伝えられた)。

また、このアピールでは、「生きる力」を構成する知・心・体の三要素のうちの「知」の部分を「確かな学力」と呼んだ。

単なる「言い換え」ではあるが、「確かな学力」は、これ以降、文部科学省が頻発するキーワードとなり、「生きる力」から独立して語られることが多くなる。

具体的な動きとしては、「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)(Wikipedia)」「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」に代表される、指定校・拠点校・モデル校を対象とした競争的・重点的な事業を次々と打ち出している。

同じころ、「三位一体改革」(国の権限・財源の地方自治体への移転)が国策として進められており、義務教育にかかわる権限と財源も地方へ移譲する方向が有力になりつつあった。基準的・義務的なサービスを(減量化した上で)現場の自治に任せ、競争的・裁量的サービスの配分は文部科学省がつかさどる、という方向性は、大学改革とも共通しているように見える。

2003/10の中央教育審議会答申「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」では、指導要領の基準性と確かな学力に関してより踏み込んだ内容が盛り込まれた。

初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について(答申) 学習指導要領の「基準性」の一層の明確化 (中央教育審議会)
「学習指導要領では,従来から,各教科に示された指導内容に関して「~は扱わないものとする」などの取り扱う内容の範囲や程度を明確にする記述(いわゆる[はどめ規定])や「~については○種類又は△種類扱う」などの事例数等の範囲や程度を明確にする記述が「内容の取扱い」として示されている。
これらのいわゆる[はどめ規定]等は,学習指導要領に示された内容をすべての児童生徒に指導するに当たっての範囲や程度を明確にしたり,学習指導が網羅的・羅列的にならないようにしたりするための規定である。したがって,各学校において,必要に応じ児童生徒の実態等を踏まえて個性を生かす教育を行う場合には,この規定にかかわらず学習指導要領に示されていない内容を指導することも可能なものである。ところが,その趣旨についての周知が不十分であるため,適切な指導がなされていない状況も見られる」

2003/12には、教員や教科書会社にきちんと定着していなかった点を明確にするため、という理由でH10学習指導要領の一部改正が行なわれた(総則部分の改正で、このページにまとめてある分は変化なし)。その結果、厳しい検定を受けたH14年版の小中学校教科書は寿命を終え、H17年版(小学校)・H18年度版(中学校)に代わられる。2003年に行なわれたH17年版小学校教科書の検定では、前回の検定で「歯止め規定」を根拠に削除された記述も「発展的な内容」として許容されるようになった。

H17年版の教科書は、H14年版よりも内容量が増加しており、「確かな学力」「発展的学習」(「読み物」など)を前面に打ち出したものになっている。

2005~

2005年の初頭には、文部科学大臣が、「学力向上」を主要目標の一つに据え、「主要科目の時間数増加」「指導要領の早めの見直し」などを示唆する発言を行なった。

2006年秋に、高校社会科・情報科などの「必修逃れ」(文科的には「未履修」)が話題となった。

2006年末の文科省のまとめでは、理科の未履修は全体の約7%で、国・数・英以外の他の科目と同程度とされる。

いろいろな伝聞をもとにすると、高校理科の「理科基礎・理科総合A・理科総合B」(3つのうちから1科目が必修)でも「見なし履修」は行われており、例えば生物Iを履修することで理科総合Bを履修したと見なす。

この「見なし履修」が違反(未履修)かどうかは、見解が分かれているようだが、おおむね容認される方向のようだ。

東京都は、文科省への問い合わせに基づき、「履修もれではない」としている。

伊吹文科大臣の記者会見における発言(2006/12/12)も、この現状に沿ったものであろう。

「理科総合等という概念の中に、物理等というものが、どういうふうにからまっているのかをしっかりと押さえておかないと、この場でにわかに未履修だとかどうだとか、断定するのは難しい」
平成18年12月12日大臣会見概要(文部科学省)

文科省自身が「理科総合」の存在意義を軽く考えていることが伺われる。


中央教育審議会初等中等教育分科会 (文部科学省)
教育課程部会 理科専門部会 委員名簿
理科専門部会(第1回)における主な意見
理科専門部会(第2回まで)における主な意見
教育課程部会における審議内容に関して寄せられた主な意見

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