レポートの書き方(引用文献)
文献・引用・参照

他者が書いたさまざまなタイプの著作物(書籍・論文・記事・ウェブサイトのページなど)を「文献」、文献をレポートや卒業論文で使うことを「参照する」「引用する」、使われた文献を「参照文献」または「引用文献」と呼びます。学生実験の場合、教員が配付した資料・板書・口頭説明なども引用文献に含まれます。

「引用」「参照」はほぼ同義。ただし、文章や文の一部をそのまま使う場合は「引用」の方を使う。このようなケースを「狭義の引用」ということもある。

内容を要約して示す場合や、事実の根拠として使う場合は「参照」「引用」のどちらでも構いません。

狭義の引用は、必然性があるときにのみ使います。例えば、文章の解釈が焦点となる(例: 古文書)、言葉や構文が関心の中心にある(例: 詩や小説の鑑賞)などで、自然科学ではめったに使いませんが、学生のレポートでは許容されます。ただし、地の文と明確に区別できるようにします。

「参考文献」は「参照文献」「引用文献」と同じ意味で使われることもある。しかし、具体的な参照部位を示さずに内容を使うという剽窃(パクリ)まがいの利用を取り繕うのに使われる例が多い。

その他でも、人によって別のさまざまな意味を指すことがあるので、使わない方がよいと思う。

書籍・雑誌やネットで公表された内容を

  1. 必要性に応じて
  2. 著作権を侵害しない方法で
  3. 内容に責任を持ちつつ
引用することは万人に認められた権利です。

引用のルール
  1. レポート・論文のどの文章がどの文献の引用にもとづいているかを明示する
  2. 引用した内容がその文献に書かれていることを検証できるようにする
  3. 引用した内容に基づいて何らかの記述をする。事実の信頼性に対する評価、事実からの推論、事実に基づく自分の意見など。
    この点については、 レポートを書く前に (板坂耀子氏)にずっと分かりやすく説明してあります。

これらのルールに則るには、ほぼ定番の方法がある。

  1. 引用文献の「書誌情報」を示す
  2. 引用にもとづく箇所にアンカーをつける

このルールは、以下のようなことを防止することを目的としている。

  1. 他者の調査・研究・考察・創作・体験・執筆の成果を横取りする(剽窃・盗作・パクリ)
    レポート・論文で多いのは「他者の記述を自分の記述であるかのように見せかける」
  2. 架空の事実を創作する(捏造)
書誌情報を示す

「書誌情報」は、引用文献の内容を第三者が検証することを可能にするような情報で、文献のタイプによって違いがある。

  1. 書籍: 著者名・発行年・書名・出版社名
  2. 書籍(分担執筆の場合): 著者名・発行年・タイトル・書籍の編者名・書名・ページ・出版社名
  3. 論文(学術雑誌論文): 著者名・論文/記事のタイトル・雑誌名・発行年・巻号・ページ
  4. 記事(新聞/雑誌): 新聞/雑誌名・日付
  5. ネット上のページ: 著者名・ページタイトル・URL・参照した日付
本文の参照箇所にアンカーを挿入する

文献のアンカーやリストの書き方は、分野によって違う。自然科学では以下のような書き方が多数派。

文献リストがあいうえお・アルファベット順に並ぶ場合

例えば、リストに次のような文献があるとすると、

大川篤・小山寒 2007 宗像市におけるマムシグサの性とサイズ 赤間生物研究会誌 15号 pp. 12-15

次のようにアンカーをつける。

福岡教育大周辺のマムシグサ(72個体)は、偽茎直径15mmを境に雄と雌が分かれた(大川・小山 2007)
大川・小山(2007)によれば、福岡教育大周辺のマムシグサ72個体は、偽茎直径15mmを境に雄と雌が分かれた。

前者のようにカッコに入れて文節または文章の末尾(ふつうは句読点の直前)に挿入する場合と、後者のように主語や目的語として入れ込む場合がある。

著者が3人以上いる場合は、(大川ら 2005)のように先頭の著者以外を略す。

文献リストがレポート内で使用した順に並ぶ場合

文献リストでは、それぞれの文献に番号をつける

1. 大川篤・小山寒 2007 宗像市におけるマムシグサの性とサイズ 赤間生物研究会誌 15号 pp. 12-15

次のようにアンカーをつける。

福岡教育大周辺のマムシグサ(72個体)は、偽茎直径15mmを境に雄と雌が分かれた(文献1)
狭義の引用

必然性のないときは使わない

引用部が短い(1行程度かそれ以下)のときはカギカッコに入れる。長いときは、独立した段落とし、マージンを広めに取る

南方熊楠は、以下のように問題点を列挙した(文献1):
第一に敬神思想を薄うし、第二、民の和融を妨げ、第三、地方の凋落を来たし、第四、人情風俗を害し、第五、愛郷心と愛国心を減じ、第六、治安、民利を損じ、第七、史蹟、古伝を亡ぼし、第八、学術上貴重の天然紀念物を滅却す

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