レポートの書き方: 検証可能性
書きかけです
レポート・論文では検証=ツッコミ

仮説/理論/モデルの妥当性・有用性を実験や観察、調査などによって検討することを「検証」(験証)と言います。検証の結果、妥当性や有用性が支持されることもあれば、支持されない場合もあります。

生物学や社会科学のような、結果が広い意味で統計的に表現される科学では、
  1. 仮説と理論とモデルはあまり明確に区別できません。ほぼ同じ意味と考えて大きな支障はありません。
  2. 「証明された」はほとんど使いません。「支持された」を使います。
  3. 「否定された」はあまり使いません。「支持されなかった」「反駁された」を使います。

検証は、科学的な方法の中核の一つで、レポート・論文も検証の対象となります。

仮説の検証はポジティブ・ネガティブの両面を持ちますが、レポート・論文の検証は、ほとんど一方的にネガティブな目的だけです。難点を発見しようとする試みが検証で、平たく言えば、「ツッコミ」を入れることです。

ここからは、「検証」のことを「ツッコミ」と言い換えます。

学術雑誌に載る論文の場合は、専門家による査読者(審査員/レフェリー)によるツッコミを通り抜けないと発表することができません。査読のない学術雑誌もありますが、論文は一段低い扱いを受けます。

ツッコミのポイントは主に2つです。

学術雑誌の論文の場合は「他の論文よりも科学的な価値が高いか」「他の論文よりも雑誌の売り上げに貢献するか」などの相対的な評価も加わるため、上の2つだけではありません。
これらの難点を見えにくくすることは ・間違いの指摘から逃げない (検証可能性)

レポート・論文は、批判・検証・間違いの指摘から逃げない (検証可能性)

事実関係について出典/ソースなし 事実関係について出典/ソースをぼやかす 「関係者によると」「私が見つけた文献では」 架空の出典/ソース(多様なパターンあり) 自分の考察や意見は書かない 当たり障りのない正論 段落どうしや文どうしのつながりが不明
根拠を示す

どんなに立派な意見、どんなに正しそうな仮説、どんなにもっともらしい事実であっても、根拠が示されていなければ、レポート・論文ではあまり意味がありません。

根拠が示されていれば、それを検討することを通じて意見や仮説の検証をすることができます。日常会話で言うことに逐一根拠を示したら嫌われそうですが、レポート・論文では、逆です。

課題の一つは、専門家でない市民のあいだで、外来生物問題への関心が低く、知識も乏しいことだと考えられる。だから、学校教育の場でもっと積極的に取り上げていく必要があるだろう。

レポートの中に上のような考察を示すとしたら、市民の間での関心の低さや知識の乏しさ、また、それらが教育での軽視とつながりがあることを(部分的にでも)支持する根拠が、前の方で示されていることが必要です。

根拠の種類

根拠となるのは、自らが実験や調査を通じて得たデータ、あるいは他者が得たデータを含む文献の記述などです。

根拠は、3つのグループに分けられます

  1. 自前のもの
  2. 引用・参照によるもの
  3. 自明なもの
代表例 根拠や出典(ソース)
自前のもの 自分が実験・観察・調査から得たデータ
自分が目撃した/体験した事実
実験・観察・調査の方法
目撃・体験の状況
引用・参照によるもの 文献から得たデータ・事実
伝聞によって知った事実
文献の書誌情報など
伝聞の状況
自明なもの 根拠や出典(ソース)を示す必要がないくらい明らかな事実。レポートの場合は、高校までの教科書に載っている位を基準とすればよいでしょう。 (なし)
根拠のランク

根拠には、ランクがあります。

データの質によるランク

一般的には、データを出した本人が実験・調査方法を含めて詳細に報告したものが最も重視されます。多くの場合は「学術論文」の形で発表されます。一般的なルールに則って書かれた論文は、同じ実験・調査方法を取ることで同じ結果が得られる(再現性)かどうかを調べること(これを「追試」といいます)で、検証することが可能です。

対照的に、匿名の人物によるウェブサイトで出典のない記述は、検証できる可能性が非常に低いということになります。

このような両極端の中間に、新聞・雑誌記事など、さまざまなものが分布しています。

伝達段階によるランク

学術論文の場合、

  1. 一次情報: 学術論文
  2. 二次情報: 学術論文を引用して書かれた専門書
  3. 三次情報: 学術論文や専門書を引用して書かれた新聞やネット上の記事
  4. 四次情報: 記事を読んで書いた個人のウェブサイトのページ
  5. ∞次情報: 書籍であれ、新聞記事・ネットページであれ、出典がないもの

最後の伝達が途切れているものは論外ですが、伝達を重ねるたびに根拠としてのランクはどんどん下がっていきます。理由は次の2つです。

  1. 伝達の過程で重要な点が抜け落ちたり、内容に誤解が入り込んだり、妥当は言えない解釈が入り込む
  2. 内容が単純化されて、具体的→抽象的になり、内容の真偽や信頼性を吟味できなくなる

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