クロマトグラフィでみる葉の色素と黄葉・紅葉

光合成色素を分離し、緑葉→黄葉・紅葉のメカニズムを考える

要点
ヤブツバキ
導入

光合成は、細胞の中の葉緑体に含まれている光合成色素が光を吸収するところから始まる。光合成色素は、次のような性質を持つ。

  1. 複数の種類が含まれている
  2. いずれも水には溶けず、有機溶媒や油に溶ける

この実験では、TLCクロマトグラフィーによって光合成色素を分離する。緑葉・黄葉・紅葉を比較し、さらにニンジンの色素とも比べてみよう。


ツツジ(オオムラサキ)。黄葉している葉と緑のままの葉を使う

ホルトノキ
ホルトノキ(ホルトノキ科)。下の方の葉が紅葉している。

色素の抽出まで

試料(ニンジンはおろしたもの、葉は半乾燥)にシリカゲル少量とエタノールを加え、乳鉢で細かくすり下ろす。

ニンジン乾燥粉末 ツツジ黄葉
ツツジ緑葉 ホルトノキ紅葉

光合成色素は、細胞の中の葉緑体の中にある「チラコイド膜」に溶け込んでいる。だから、細胞を粉々にする必要がある

完全に粉砕されたら、石油エーテルを加える。色素が溶け出した石油エーテルを試験管にとる


左から、ニンジン・ツツジ黄葉・ツツジ緑葉・ホルトノキ紅葉

光合成色素は、水に溶けないが、石油エーテルのような有機溶媒にはよく溶ける。

クロマトグラフィ

TLCシートに上澄み液の点を作る。ピンセットの先端で少量ずつ。

ビーカーに展開液(石油エーテル65: アセトン35)を入れ、パラフィンフィルムをかぶせる。TLCシートを割り箸にはさんでフィルムの切れ目からビーカーに差し込み、シートの先端が展開液に浸るようにする。

展開液がTLCシートを上がり始め、色素がいっしょに上昇する。展開液と結びつきが強いものほど速く、TLCシートの表面のシリカゲル粉末と結びつきが強いものほど遅く上昇する。

石油エーテルは揮発性がある。蒸気を大量に吸わないように注意する。

数分〜10分でビーカーの7分目まで展開液が上がり、色素が分離しているのが見られる。TLCシートを取り出して色素を観察しスケッチをする。

左から、ニンジン・ツツジ黄葉・ツツジ緑葉・ホルトノキ紅葉

解説

緑色の葉には、何種類かの色素が含まれていて、光を吸収して光合成のためのエネルギーに変換する役割を持っています。緑色の色素は2種類あって、青緑色のものがクロロフィルa、緑色のものがクロロフィルbです。とくに、クロロフィルaは、植物の光合成にとってぜったいに欠かせない色素です。展開液の先端に出てきた、オレンジ色の色素はカロテンで、ニンジンの色=カロテンの色です。他に、ルテインなど数種類の黄色い色素が含まれています。これらは、総称してキサントフィルと呼ばれます。

寒くなったり、古くなった葉は、寿命を終えて落葉しますが、その前に、必要がなくなったクロロフィルが分解されて緑色が抜けます。カロテンやキサントフィルが残るため、葉は黄色になります(黄葉)。種類によっては、落葉の前に、「アントシアン」と呼ばれる赤い色素が合成されて赤くなります(紅葉)。アントシアンは展開液に溶けないため、クロマトグラフィーで分離することはできません。



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