ヤブガラシ(ブドウ科)
花序と花
ヤブガラシの花は、咲きはじめは花柱が短く(左の写真)、やがて花柱が伸びて(下の写真右上の花)、雄しべと緑色の花被片が脱落する(下の写真中央下の花)。その後、オレンジ色の花盤がピンク色に変わり(下の写真左の花)、花期を終える。花の底が平たくなっていて(花盤[floral disc])、花盤から滲みだした蜜が水滴のように見える。
花盤(SEM画像)。気孔と同じ構造の開口部が散在していて、ここから蜜が分泌される。
簡易紫外線写真。ほぼ全体が紫外線を吸収する。
訪花昆虫
蜜を舐めに来ているヒメスズメバチ・セグロアシナガバチ・ツマグロキンバエ
アミメアリが蜜に集まっている。葯や柱頭に全く触らないから、送粉に寄与しているとは考えにくい。
マメコガネも多いが、交尾や花そのものを食べていることが多い。
葉と茎
地中を地下茎が横に伸び、複数の茎を出す
晩春~初夏、他の草に遅れて勢いよく芽が伸び始める。数十㎝まっすぐ上へ伸びてから盛んに分岐して葉を広げる
葉は鳥足状複葉で小葉は鋸歯縁
目立たない托葉がある
巻きヒゲでフェンスやほかの植物に絡みつくツル植物
主軸の先は1回分岐する細い巻きヒゲになる。主軸についた葉の腋芽がふつうの茎となり伸び続ける
巻きヒゲは宙を突いて振れながら伸び、先が何かに触れると巻きつく。
先端が巻きついてから途中がよじれてらせんになり、茎を引き寄せる。らせんの向きは、途中で1・2回逆転する(矢印)。
ツルや巻きヒゲの向きは、基部を下、先端を上に見たとき手前に来る方が左上がりのとき「S巻き」、右上がりのとき「Z巻き」と読んで区別することがある。
果実
結実するヤブガラシは西日本を中心に分布する二倍体で、より広い範囲にふつうに見られる三倍体は結実しない(岡田ら 2003)。
Okada H, Tsukaya H, Okamoto M. 2003. Intra-specific polyploidy and possible occurrence of some genetic types for pollen development in Cayratia japonica, Vitaceae. Acta phytotaxonomica et geobotanica 54(1):69-75. DOI https://doi.org/10.18942/apg.KJ00004623207 (J-Stage )
結実するヤブガラシの葉と花。5小葉の葉に、4小葉・3小葉の葉が混じる。
結実個体の花(右上)は非結実個体の花(左下)より一回り小さい
結実個体の花粉と非結実個体の花粉
非結実個体の花後
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