タブノキ(クスノキ科)
開花期
びっしりと花序をつけた枝は、独特のきらびやかさがある
開花サイクル
冬芽が開くと、新しい枝、新しい葉、花序がいっせいに伸び出す
開き始めの花。つぼみの先から白い柱頭がのぞく。
タブノキの花。咲きはじめの雌性期で、雄しべは横たわり、花柱だけが突き出ている。
同じく雌性期だが、柱頭は少し古くなっている。花は、花被片3×2・雄しべ3×3・仮雄しべ3・雌しべ1で構成される。オレンジ色の蜜腺9個のうち、雌しべを取り巻く小さな3つは仮雄しべ(花粉をつける機能を失った雄しべ)、やや大きな6つは、雄しべの基部から一対の枝が出て、その先が蜜腺となっている。
2数性の花(花被片2×2・雄しべ2×3・仮雄しべ2・雌しべ1)。ふつうの花に低頻度で混じる。
2数性に加えて雄しべの1つが弁化した花
子房の中には胚珠が1つ
雌性期が終わると、花は閉じる
再び開くときには、雄性期になっている。蜜の分泌も再開する。
開きかけの雄性期の花(左)と閉じ始めた雌性期の花(右)。細胞の伸長によって開閉するので、雄性期の花は雌性期より一回り大きい。
葯の表面の4ヶ所がまくれ上がって花粉を出す(弁開)。
花粉を出していない葯(左)と花粉を出した葯(右)
頻度は低めだが、雄性期になっても柱頭が新鮮なままの場合もある
雄性期が終わると、花は再び閉じはじめる
花序
花序は1出集散花序。いっぺんに咲くのはせいぜい数個。
この写真では雌性期の花と雄性期の花が並んでいるが、時間帯によって雌性期だけのとき、雄性期だけのときの方が多い。
訪花昆虫
ヒラタアブ・ドロバチ(?)・ハナバチ・ハエなどが蜜・花粉を舐めに来ていた
交配実験のようす。袋をかけて昆虫の訪花を排除し、雄性期の花の葯を雌性期の花の柱頭になすりつける。
交配した花には、花粉親によって違う色で印をつける
子房がふくらみ始めてから、果実が熟するまで残存率を調べる。
甲虫に食い荒らされた花もよく見かける
果実
受粉しなかった花は、閉じたまま落ちる
受粉した花は子房がふくれて、花被片が再び開く。子房はさらに成長を続ける。
熟するときには、緑色の果皮が黒くなる。開花と同じように、1ヶ月くらいの間、少しずつ熟し続ける。
果肉は緑色。味や舌触りはアボカドと似ているが、独特の臭気があって不味い。
7月中旬に常緑樹林内にあったタヌキの溜め糞には、おびただしい数のタブノキの種子が含まれていた。
春の新緑
花と葉の両方が入っている冬芽(混芽)と葉だけが入っている冬芽(葉芽)。花が入っている方がずんぐりとしていて、表面の毛も目立つ。花入りの芽が半月くらい早く展開する。
混芽が花序と新緑の展開を終えたのに対して、葉芽は展開が始まったばかり
クスノキより少し遅れて新緑の季節を迎える
堅く重なり合っていた鱗片葉がゆるみ、2~3枚のへら状の葉、その先に多数の普通葉が噴き出すように広がり出す。花序がある芽では葉と同時に花序が伸び出す。
鱗片葉とへら状の葉が脱落するのと並行してシュート(当年枝)が一気に伸長する。
新芽で繁殖するトガリキジラミの1種
木の下には、鱗片葉・へら状の葉・花が落ちている
当年枝のつけねには、鱗片葉の痕が「ねじ山」のように残る
枝を基部の方にたどると、昨春の鱗片葉の痕、その前の春の鱗片葉の痕とたどることができる。
その他
葉
シュート
樹幹
黄葉後に落葉し、すぐに褐色になる
おそらく強風による尾根筋の倒木
萌芽
幼植物は、暗い場所にも耐えてゆっくりと成長する
タブノキウスタマバエによる葉裏の虫えい
ホソバタブ
果序は垂れ下がる
アボカド
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