雌雄異熟(3)
送粉者の動きと異熟性
オオバコの花序では、穂状についた雌性先熟の花が下→上と咲き進むために、穂の上の方に雌性期の花・下の方に雄性期の花という上下関係となる。風媒のオオバコでは、雄性期の花から花粉が自然落下するので、この配置は自家受粉の確率を減らしているだろう。雌雄異花同株の風媒花でも、雌花が上・雄花が下という配置がしばしば見られる。
雄性先熟の花が穂になっていて、下→上と咲き進むときには、逆に、雌性期の花が下・雄性期の花が上という配置になる。ハナバチ媒花の場合、花序の下から上へ向かって花を渡り歩くハナバチの習性に対応した自家受粉回避/他家受粉促進のしくみと説明されている。
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Darwin CR. 1877. The effects of cross and self fertilisation in the vegetable kingdom. London: John Murray. p.390 (link)
左―風媒・雌性先熟のオオバコ(オオバコ科)の花序
上―ハナバチ媒・雄性先熟のソバナ(キキョウ科)の花序
グラジオラス(アヤメ科)の花序。花は雄性先熟で、最初は花柱が上を向いている(上の花)。花柱が湾曲して先端が花の「のど」に突き出し、3つに割れて柱頭面が露出する(中・下の花)。
円盤状の花序で外→内と咲き進む場合は、雄性期の花を雌性期の花が取り囲むような配列となる。訪花昆虫が外側から内側へと移動する場合には、同じように、自家受粉回避/他家受粉促進のしくみとしてはたらく。
シロタエヒマワリ(キク科)の花序
花序の雌雄異熟
花序が異熟性を示す場合がある。
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花序が異熟性の両性花からなり、個々の花の雌性期から雄性期への(または、雄性期から雌性期への)変化が同調しているとき
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花序が雌花と雄花からなり、雄花の開花期と雌花の開花期がずれるとき
両性花からなる花序
スズメノヤリ(イグサ科)。雌性先熟の風媒花で、花被片が閉じたまま柱頭が伸びて受粉し、柱頭がしぼんでから花被片が開いて雄しべが顔を出す。
雌性期の花序の拡大。柱頭は、どんな理由があるのか、ねじれている。
雄性期の花序の拡大。柱頭はしおれている。
ヤツデ(ウコギ科)。花序ごとに雌雄異熟は同調している。
雄花と雌花からなる花序
オオニシキソウ(トウダイグサ科)の杯状花序。雌雄異花で、雌花は雌しべ1個、雄花は雄しべ1個だけでできている(雄花のつけねには、継ぎ目がある)。雌花1個と複数の雄しべが苞葉でできたカップの中についている。画像には7個の杯状花序が写っている(A~F)。まず、雌花が腺体のすきまからカップの外へと突き出て、6本の花柱を広げる(A)。受粉が終わると花柱が閉じ(B)、成長した子房は倒れてカップの横に来る(C)。続いて、雄花が突き出し(D→E)、送粉を行って、しだいに脱落する(F)。
ジュズダマ(イネ科)。葉腋に数個の花序がつく。雄小穂と雌小穂があり、苞葉が変形した「つぼ」に納まった雌小穂群と「つぼ」から突き出した雄小穂群で1つの花序ができている。雌小穂3個のうち、1個だけがブラシ状の花柱(白いものとえんじ色のものとがある)を出す。雄花序は未開花。柱頭がしおれてから、苞葉が開いて葯がぶら下がる。
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