ナンキンハゼ (トウダイグサ科)

ナンキンハゼは、中国原産の庭園樹木で、秋の紅葉や冬の白い「実」が美しいことから街路樹として使われ、校庭や公園などでもわりと普通に植えられている。

紅葉
ナンキンハゼナンキンハゼ
紅葉したナンキンハゼ(クリックで拡大)

ナンキンハゼ ナンキンハゼ ナンキンハゼ ナンキンハゼ
「実」
ナンキンハゼ白い「実」をつけたナンキンハゼ(クリックで拡大)

ナンキンハゼ
ナンキンハゼ白い「実」は果皮が取れて3個の種子が露出したもの。
生態
ナンキンハゼ
高知県物部川の河川敷。西南日本では、河川敷を中心に野生化した個体が見られる。

ナンキンハゼ
福岡県遠賀川の河川敷

ナンキンハゼ
掘り下げられて裸地した三年目には幼樹が目立ち始めた

ナンキンハゼ

葉は、幅の広い披針形で、長い葉柄がある。葉柄と葉身のつなぎ目には、1対のいぼのようなものがある。

ナンキンハゼ

ナンキンハゼ ナンキンハゼ
わりと遅めに葉が展開する。新葉はけばけばしい赤色。

ナンキンハゼ
樹幹

ナンキンハゼ ナンキンハゼ

花は7月の初め頃から咲き始め、たくさんの花が穂のようにつく。雌花と雄花に分かれていて(雌雄異花同株)、雄しべと雌しべだけが目立つ、小さくて単純な花である。雄花と雌花のどちらかが先に咲き、もう片方が後から咲く(雌雄異熟)。咲く順序が、木によって違い、雄花から先に咲く雄性先熟型と雌花から先に咲く雌性先熟型とがある。

岡本素治 1986 ナンキンハゼの花序の二型 植物分類地理 38:122
雄性先熟株(♂→♀→♂)
ナンキンハゼ

穂のようにたくさんついた雄花が先に咲き始める。雄花が咲き終わって穂から落ちたころになって、穂の付け根のところの小さな穂が伸びる。小さな穂には、付け根の方に数個の雌花、先の方に多数の雄花がついていて、まず雌花が咲き、その後雄花が咲く。

雄性先熟株の開花期を通じた変化

雌性先熟株(♀→♂)
ナンキンハゼ

穂の下の方に数個の雌花がつき、その上に雄花がたくさんつく。雄花がつぼみのうちに下の方の雌花が咲き、雌花が咲き終わって柱頭を落とした頃になって雄花が満開となる。

雌性先熟株の開花期を通じた変化

異型雌雄異熟性
ナンキンハゼ
雌性先熟株(PG)と雄性先熟株(PA)の花序→果序の変化の模式図

ナンキンハゼ雄性先熟株の1本と雌性先熟株の1本の雄花(実線)・雌花(点線)の開花数(相対値)をグラフにしたもの。横軸は日で、2001/06/25が0にあたる。

ナンキンハゼ上のようなデータを、雄性先熟株・雌性先熟株それぞれ10本ていどについてまとめたもの。赤―雄性先熟株、青―雌性先熟株、実線―雄花(相対値)、点線―雌花(相対値)。

雄性先熟株の雄花と雌性先熟株の雌花の開花は、違う木の間でピークが重なっており、雄性先熟株の雌花と雌性先熟株の雄花も、違う木の間で開花ピークが重なっている。

訪花昆虫

さまざまな昆虫が蜜や花粉を集めに来る。蜜は、雌花・雄花序の基部の方の両側についた耳たぶのような蜜腺から出る。

ナンキンハゼ・クマバチ

ナンキンハゼ・セイヨウミツバチ

ナンキンハゼ・コマルハナバチ

ナンキンハゼ・コアシナガバチ ナンキンハゼ・コアシナガバチ

ナンキンハゼ・クロアゲハ

ナンキンハゼ・ツマグロキンバエ ナンキンハゼ・ツマグロキンバエ

ナンキンハゼ・ナミテントウ

果実と種子
ナンキンハゼ
ナンキンハゼ
ナンキンハゼ

果皮は先端と基部側から互い違いに裂けて、白い3個の種子を残して脱落する。

ナンキンハゼ雌性先熟型の果序。枝分かれがなく、主軸に果実がじかにつく。

ナンキンハゼ ナンキンハゼ
雄性先熟型の果序。主軸から分かれた側枝に果実がつく。右のように、側枝が1本のこともある。

ナンキンハゼ
雌性先熟株(左)と雄性先熟株(右)の果序の模式図

年を越すころになって、剥き出しになった白い種子を鳥が食べに来る。ヒヨドリ・キジバトが目立つが、シジュウカラやハシブトガラスも見かけた。

ナンキンハゼ・ヒヨドリ ナンキンハゼ・ヒヨドリ
ヒヨドリ

ナンキンハゼ・キジバト ナンキンハゼ・キジバト
キジバト

ナンキンハゼ・シジュウカラシジュウカラ
芽生え
ナンキンハゼ ナンキンハゼ
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