ホウセンカ(ツリフネソウ科)(1)花
花の色は赤、ピンク、紫、白とさまざま。
八重咲品もよく見かける
花の構成
ホウセンカの花では、花被片が組み合わさってラッパのようになる。「ラッパ」の入口には「ひれ」がつき、「ラッパ」の奥には細長いひものような距(きょ)がついている。花を正面から見ると、入口の上から小さな突起が突き出している。
花の分解
6枚の花被片=1~6; 距=sp; 花柄=pd; 突起を矢印で示す。花被片1・2(2は反対側で見えない)は他と比べてずっと小さい。距(sp)は花被片3の表面が突き出たもの。花被片5・6は大きく2つにくびれている(a・bで表わす)。つぼみのときは、花被片5・6は折りたたまれて花被片3と4に上下から包まれる。
花被片1~3を萼片、花被片4~6を花びらと区別し、さらに、花びら5・6は2枚の花びら(a・bにあたる)が合着したと見なすことが多い。この場合は、萼片3・花びら5ということになる。
はたらきで区分すると、次のようになる。
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ラッパ ― 3(一部)・4・5b・6b
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距 ― 3(一部)
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ひれ ― 5a・6a
つぼみのときは、萼片3と花びら4が花びら5・6を包み込んでいる。
距の中には蜜が溜まっている。
突起は、雌しべの回りに雄しべがかぶさるようにくっついて一体化したもので、距へとつながる通路の上から突き出す形になっている。先端から花粉が出ているが、柱頭は隠れている(雄性期)。
雄しべが取れて雌しべだけになったところ。白い柱頭が露出する(雌性期)。
送受粉
ホウセンカを訪れるポリネーターは、「ひれ」に惹かれて訪れ、「ひれ」を足場にして「ラッパ」にもぐり込んで距の中の蜜を吸う。このときに、ポリネーターの背面に花粉や柱頭がくっついて送受粉が起こる。オドリコソウ(シソ科)やラン科など多数の被子植物が、ホウセンカと同じように、奥深く隠された蜜を求めて花の中に潜り込んだポリネーターの背面に花粉や柱頭をくっつけることで送粉を行っている。
ホウセンカは園芸植物なので、本来のポリネーターは原産地とされるインド~ミャンマーでないと決められない。同じ属で自生しているツリフネソウ類では、脚力が強くで長い口吻を持つマルハナバチ・スジボソコシブトハナバチが送粉している。
植えてあるホウセンカにもマルハナバチ・スジボソコシブトハナバチに加えてミツバチが来ていて、花粉や柱頭が背中に接触している。ミツバチの口吻はホウセンカの距と比べると短かすぎるが、届く範囲の蜜を吸っているのだろう(花粉カゴに花粉を集めるようすは見られない)。
花にもぐり込むトラマルハナバチ
雄性期の花にもぐり込むミツバチ。胸部の背面に花粉が触れている。
花から出てきたミツバチ。頭部・胸部の背面に白い花粉がびっしりとついている。
雌性期の花にもぐり込むミツバチ。胸部の背面に柱頭が触れている。
長い口吻を持つスジボソコシブトハナバチ
組図
雄しべと雌しべ
つぼみの中から取り出した雄しべ・雌しべの先端部。5つの葯が組み合わさっているようすが分かる。
開花直前になると、葯の先端が破れ、花粉が出始める。花糸に囲まれた緑色の部分は雌しべの子房。柱頭は葯に包まれたかっこうになっていて、外からは見えない。
開花後には、葯はほとんどくずれて、先端は花粉がむきだしになる。
やがて、花糸のつけねが取れて、5本の雄しべは固まったままぽろりと落ちる。
雄しべが取れると、初めて柱頭が露出する。
花粉管の伸長
ホウセンカや近縁種は、花粉管の発芽・伸長の観察によく使われる。蒸留水や水道水の水滴表面に花粉を散りばめるだけで、短時間で発芽・伸長が起こる。他の多くのグループのように、ショ糖溶液(種によって違うが10%ていど)を使う必要はなく、溶液が蒸発しないように長時間保つ必要もない。発芽・伸長率もずっと高い。
プレパラート作成後、6分~21分後のようす。
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